日本を動かす官僚の街・霞が関から“マル秘”情報をお伝えする『文藝春秋』の名物コラム「霞が関コンフィデンシャル」。最新号から、ダイジェストで紹介します。 

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奔走する財務官僚

 参院選に続き、自民党総裁選でも物価高対策が焦点になり、財務省の内部からも「消費税が守れれば、所得税はやむを得ないか」(中堅官僚)との声が漏れるようになった。総裁選の間も同省は主計局、主税局を中心に候補者の公約の精査や陣営幹部との接触を続けた。

©cap10hk/イメージマート

 小泉進次郎氏には主税局の岩佐理審議官(平成6年、旧大蔵省入省)が張り付いた。小泉陣営の政策を練ったのは財務省出身の村井英樹元官房副長官(15年、財務省)。岩佐氏は早い段階から村井氏や、陣営全体を切り回す木原誠二選挙対策委員長(5年、旧大蔵省)と接触を重ねた。加えて、新政権の運営には野党の協力が欠かせない。「岩佐氏は国民民主党との連携を意識していた」(同省幹部)とされ、補佐役の一松旬官房審議官(7年、同)とともに、ガソリン減税や、現役世代に対する所得税減税を丁寧に説明してきたという。

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小泉進次郎氏 ©文藝春秋

 林芳正氏の周囲では、自民党税制調査会の宮沢洋一氏(昭和49年、同)が陣営にいることもあり、財務省の姿は目立たなかった。「次の一手はよく分かっている」(同前)という安心感があったためだ。

 積極財政を唱え、財務省と水が合わないように見えた高市早苗氏だが、選挙演説では「財務省には成長経済のプランを作れと言っている」と訴えた。念頭に置いたのは一松氏と末光大毅主計官(平成11年、同)ではないか。2人はいずれも高市氏の地盤である奈良県の総務部長や副知事を経験。末光氏は社会保障や地方財政を担当しており、「次官候補の一松氏に続く世代のホープ」(課長)とされる。同期には総裁選に出馬した小林鷹之氏がいる。「末光氏はきりっとした細面のイケメン。小林氏と並んで若手の頃から人気があった」(同前)という。

高市早苗氏 ©文藝春秋

 高市氏、小林氏ら増税や緊縮財政を嫌う保守派のリーダーとの関係を深めていくのは、財務省の政界人脈の弱点を補うことにつながる。主計局、主税局で経験を積んできた末光氏は「コストカット型経済からの脱却」が持論だけに、「高市氏らとかみ合うところもあるのでは」(同省幹部)との見方もある。

この続きでは、野党との連携の備えについて言及しています〉

※本記事の全文(約4500字)は、月刊文藝春秋のウェブメディア「文藝春秋PLUS」と「文藝春秋」2025年11月号に掲載されています(霞が関コンフィデンシャル)。全文では下記の内容をお読みいただけます。

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