日本を動かす官僚の街・霞が関から“マル秘”情報をお伝えする『文藝春秋』の名物コラム「霞が関コンフィデンシャル」。最新号から、ダイジェストで紹介します。 

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さらば「純血路線」

 夏の人事で満を持して金融庁長官となった伊藤豊氏(平成元年、旧大蔵省)。6年前に財務省から籍を移して以降、長官候補なのは衆目一致するところだったが、ほぼ間違いない、と言われていた昨年夏に昇格が見送られ、今夏も就任を疑問視する向きもあった。

今年7月、金融庁長官に就任した伊藤豊氏 ©時事通信社

 伊藤氏の長官起用を押しとどめていたとみられるのが、かつての「大物長官」森信親氏(昭和55年、同)が敷いた「森イズム」の影響だ。永田町・霞が関で財務省の「出先」と見なされがちだった金融庁を「政策官庁」の一角に押し上げるのが森氏の悲願だった。その一環で、財務省との課長級程度の人事交流はほぼ絶え、庁幹部の「純血化」が進んだ。

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 これに対し伊藤氏は財務省秘書課長時代から、財・金の垣根を越えた一体的な幹部人材育成が持論。率先垂範とばかりに、財務省内でも「エース」だったキャリアに区切りを付け、自ら金融庁に飛び込んだ。言うなれば、伊藤氏の長官就任は10年近くに及んだ「森純血路線」の転換を意味するものとなった。

 すでに伊藤氏の唱える「一体的育成」の布石は着々と打たれている。昨年夏から企画市場局で「資産運用立国」政策をけん引する八幡道典審議官(平成6年、同)は財務省主計局で主計官(厚生労働担当)、総務課長の王道ルートを歩んだ後、内閣官房を経て金融庁に「移籍」。さらにこの夏には、主計局で主計官(地方財政など)を務めていた中堅の今野治氏(9年、同)が総合政策局総合政策課長に起用された。今野氏にとっては寝耳に水の異動だったものの、「伊藤路線」の狙いを理解したことで納得の表情を浮かべているという。

この続きでは、「次の長官」と言われる2人に言及しています〉

※本記事の全文(約5800字)は、月刊文藝春秋のウェブメディア「文藝春秋PLUS」と「文藝春秋」2025年10月号に掲載されています(霞が関コンフィデンシャル)。全文では下記の内容をお読みいただけます。

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