日本を動かす官僚の街・霞が関から“マル秘”情報をお伝えする『文藝春秋』の名物コラム「霞が関コンフィデンシャル」。最新号から、ダイジェストで紹介します。
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各省が備えるXデー
霞が関では「衆参両院とも少数与党では、いつ政権交代があってもおかしくない」(内閣府幹部)と危機感が強まっている。Xデーに備え、主要省庁が考えるのは首相秘書官の人事だ。
財務省は「首相に複数の候補を示し、選んでもらうことが多い」(局長経験者)のが最近の傾向だ。例えば、岸田文雄氏が首相になった時は、秘書官グループを取り仕切る嶋田隆元経産事務次官(昭和57年、旧通産省入省)が「社会保障に詳しい人材を出してほしい」と求め、主計局次長だった宇波弘貴氏(平成元年、旧大蔵省)を出した。
霞が関から出る首相秘書官は「二君に仕えず」という不文律がある。財務省の場合、石破首相の秘書官である中島朗洋氏が平成5年入省であることや、平成7年組のエース格である大沢元一復興庁審議官と一松旬氏が秘書官を既に務めていることを考えれば、次は平成6年組から出すのが順当だろう。俎上にのぼっているのは、吉沢浩二郎主計局次長と岩佐理主税局審議官という平成6年入省の2人である。
吉沢氏は主税局の調査課長、税制一~三課長をすべて務め「理論に強く、実務とすり合わせて制度を考える能力は図抜けている」(主税局中堅)。なおかつ地方財政担当の主計官も経験。政権が継続してもしなくても、消費税などの減税が大きなテーマになることは自明で、税制改正の関門である自民党税制調査会の幹部も「税のプロを首相の近くに置くのは当然だ」とみる。
岩佐氏は主計局での経験が長い。主計官だけでも厚生労働、公共事業、防衛、文教と4分野を担当。「これだけ多くの係を担当するのも珍しい。予算の隅々まで分かっている」(財務省幹部)ことに加え、文書課長も2年務めており、国会対策も熟知している。
両名とも官庁の枠を越えて政策を調整する官房副長官補室での勤務を経験しており「説明されなくても、官邸の内部事情を理解できるのが強み」(同前)だ。
〈この続きでは、首相秘書官ポストの今後について元事務次官らが語っています〉
※本記事の全文(約5800字)は、月刊文藝春秋のウェブメディア「文藝春秋PLUS」と「文藝春秋」2025年10月号に掲載されています(霞が関コンフィデンシャル)。全文では下記の内容をお読みいただけます。
★さらば「純血路線」
夏の人事で満を持して金融庁長官となった伊藤豊氏(平成元年、旧大蔵省)。6年前に財務省から籍を移して以降、長官候補なのは衆目一致するところだったが…
★駐インドネシアの謎
夏の人事で前任の市川恵一氏(元年、同)に代わって同職に就いた河邉氏は、総合外交政策局総務課長から官房副長官補・NSS次長に至るまで、市川氏と全く同じコースを歩み…
★エリートも制御不能
9月6日に悠仁さまの成年式が執り行われる。秋篠宮家を支える皇嗣職でトップの重責を担うのが吉田尚正皇嗣職大夫(昭和58年、警察庁)…
■連載「霞が関コンフィデンシャル」
1月号 「壁」を巡る同期の攻防、「岸田議連」の火種、元首相秘書官に“赤紙”、1年延期の新次官
2月号 野党対策の黒子たち、官邸に漂う閉塞感、総務官邸官僚の実力、次期警察人事の行方
3月号 経産省が込める“実弾”、新次官と首相の距離、財務相を支える女性たち、インサイダーの“余波”
4月号 財務省の“切り札”、森山印の次官レース、日米会談の余波、燃え盛る厚労省
5月号 試される牛若丸、パワハラ騒動の余波、多士済々の5年組、プロパー会長の行方
6月号 新川次官続投のけじめ、「赤澤訪米」の余波、イケメンの“天の声”、NHKの“品質保証”
7月号 「コメ次官」は誰に?、年金改革の余波、“マフィア”の系譜、肥大する内閣官房
8月号 “フッ軽”の新経産次官、主税局長留任の決意、小泉農水相のブレーン、「首相肝煎り」の迷走
9月号 財務省に潜む爆弾、うつむく官邸、平成元年組の明暗、エースのイメチェン
10月号 今回はこちら
