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優しい投手・大瀬良大地のあの日の涙はかわいたのか

文春野球コラム ペナントレース2018

2018/08/19

いい子のまま戦ってはいけないのか

 大瀬良くん、泣いてもいいし怒ってもいい笑ってもいい。ファンはあなたがいい子でいられないときも嫌いになったりしない。ヤジより応援を信じて欲しい。選手の優しさに慣れて甘えたらファンがすたるがね。そりゃ負けたら悔しいし悲鳴上げるし采配に文句も言うしエラーも四球も嫌いだけど、負けを憎んで個人を恨まずの精神で応援したい。
 
 ある日の大瀬良、打たれてベンチに帰り、グローブを叩きつけようと振り上げる。しかし、あげたその手をぐっと止め、そろりとグローブをベンチに置く。いら立つ気持ちよりグローブを大切にしてきた今までの野球人生が勝つのだ。いい子だ。悪いか、それが。いい子のまま戦ってはいけないのか、戦えないか。優しいエースはありえないか?

 私は片方残った羽を持つ末っ子の王子が好きだった。それはただの長所だ。

 背番号14。早世した津田恒美の背番号。大瀬良は津田の墓参りにも行くという。生まれる前に活躍したその投手の背番号の重さを感じてか。これはもう14という背番号が大瀬良を選んだのではないか。彼の優しさを。重く感じてないといいなあ。

 戦うものが優しければ泣くことも多いだろう。痛みも多く感じるだろう。闘志がないわけではないのだ、たわやかと闘志は同居する。笑顔と泣き顔が彼にあるように。

 最近の私的ちょい苦手はヒーローインタビューでどの球団のどの選手もが言う「皆さんの応援が力になっています」「声援が後押ししてくれています」「これからも応援よろしくお願いします」。言わなくちゃファンに失礼みたいな風潮になってませんか。毎回言わなくていいのに。俺の力で勝ったぜーと笑ってていいのに。よろしくお願いされなくても応援しちゃうのに。

 優しいファンでいたい。優しい投手を応援するのだから。あの日の涙、大瀬良くんは覚えているんだろう。忘れなくていいからかわいてて欲しい。

片方残った羽を持つ末っ子の王子と大瀬良大地 ©石田敦子

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