相続において、パソコンやスマートフォンなどの端末は法律上では動産として扱われ、所有権の対象となり相続人が相続します。相続人が複数いる場合は全ての相続人の共有になり、それぞれの相続人は相続分に応じて使用でき、売却するにも相続人全員の了承が必要になります。
一方でデジタル遺品は無機物であり原則所有権が認められないものの、死者が撮影した写真などの著作権は相続の対象になり、相続人が著作権を引き継いで使用することができます。また、生前は私的メールの無断閲覧はプライバシーの侵害に当たりますが、死者のメールは原則侵害に当たらないのです。なるほどと思いますが、日本では死に関する法や制度があまり社会に周知されていません。
FX口座の放置による多額の損失も…
『もしものとき、身近な人が困らないエンディングノート 令和版』では、デジタル終活の生前対策として、(1)「身近な人に託すもの」と「隠したいもの」に分ける、(2)見つけやすいようにデータを整理する、(3)オンライン金融資産を集約する、(4)SNSで繋がる人への希望をまとめておく、(5)ID、パスワードを書き残す、などを挙げています。SNSも種類により追悼アカウントとして残せたり、削除したいなら家族の申請が必要だったり、対応はさまざまです。
また、デジタル遺品のトラブル例として、ネット銀行口座の発見の遅れや相続争い、FX口座の放置による多額の損失、仕事関連のデータ流出、さらには秘密にしておきたい情報によって家族を心理的に不快にさせるケースもあるようです。
死後の「秘密の発覚」
検視の現場でも、例えば、不倫相手と旅行中やラブホテルにいる際の変死事案で、不倫を知った家族の憤りを垣間見ることがありますが、そのような秘密の発覚は現場で亡くなった場合にとどまりません。自宅で病死したとしても、メールやロケーション履歴などのデジタルデータは警察も家族も確認しますので、秘密にしておきたい個人の事情などが死後明るみに出てしまうこともあります。いくらいい人として人生を終えても、デジタル遺品により台無しになってしまう恐れがあるのです。