「特命係の亀山ァ~!」
こんな嫌味ったらしい声が聞こえてくると、長年の作品ファンであればあるほどニヤニヤしてしまう。
1月1日に恒例の「元日スペシャル」が放送される『相棒』(テレビ朝日系)は、ちょっと変わり者の刑事・杉下右京(水谷豊)とその相棒が主役となるドラマだが、彼らをも凌ぐ人気キャラとなっているのが、この決めゼリフの持ち主である捜査一課の刑事・伊丹憲一だ。
強面で乱暴なキャラクターに見えるが、内に秘めた正義感と不器用さを見え隠れさせ、伊丹を“愛されキャラ”に変貌させたのが、シリーズ開始当初から一貫して演じ続けている川原和久である。
『相棒』シリーズ屈指の人気キャラになるまで
川原は高校時代に演劇に出会い、日本大学藝術学部演劇学科在籍時に同級生たちと「劇団ショーマ」を結成。劇団の看板俳優として、多数の舞台に出演していた。
『相棒』シリーズには、2000年に「シーズン0」として放送された『相棒 pre season』の第1話から登場。長寿シリーズのドラマでは、準レギュラーともいえないキャラクターは数回登場した後、その後も知らされないままいつの間にかフェードアウトしてしまうことが多いが、川原は、そんな中でも初回から出演し続けているわずかな役者の1人だ。
そのことについて川原は「シリーズ化する段階で切られると思っていた。小劇場俳優が入れるわけがないと。だから『またやれるんだ』と思いましたね」と語っている(※1)。
若手時代は芝居をしながらさまざまな仕事をしていたという川原が一番長く続いたというのが塗装工のアルバイト。2トントラックを運転し、パイプや資材を現場に運び、養生用のシートやテープを貼ることから始まって、次第に刷毛を持たされ、ローラーを持たされ……とメキメキと“職人”として成長。そのうち家一軒をまかされ、現場を回すようになり、さらには、羽田空港の橋脚や消防署の壁のような公共事業も担当したという。
『相棒 season6』まで塗装工と“二足のわらじ”生活
塗装工のアルバイトは、テレビに出るようになってからも声がかかれば続ける形で続け、川原の存在が伊丹刑事として広く知れ渡りはじめた『相棒 season6』放送頃までしていたそう。川原は長らく塗装職人と役者の掛け持ちをしていたことになる。
現場で気づかれることも多くなると、「無言で『声かけないで』オーラを出していました」と語る川原。ただ「気づかれると、照れくさいというか恥ずかしいというか、複雑な気持ちになって、どんな顔をしていいか、よくわからないんですよ」と照れるところは、どことなく伊丹と似たような部分を感じさせる(※2)。
『相棒』シリーズで演じる伊丹は、強面かつやや短気な上に、女性に対してデリカシーのない発言をしてしまうこともあり、モテエピソードがなかなか出てこないが、川原は2012年に50歳で結婚。
そのお相手は、映画『ファーストキス 1ST KISS』やドラマ『カルテット』(TBS系)、『大豆田とわ子と三人の元夫』(フジテレビ系)などで知られる松たか子の姉であり、自身も舞台を中心に活躍する女優・松本紀保である。
