史上最悪の少年犯罪と呼ばれる「綾瀬女子高校生コンクリート詰め殺人事件」。

 綾瀬事件を取材する「ニュースステーション」ディレクター(当時)の山﨑裕侍氏は、服役を終えた元少年Cの行方を追い、張り込み取材を重ねた末、ついにC本人と対峙する。山﨑氏の著書『償い 綾瀬女子高校生コンクリート詰め殺人事件 6人の加害少年を追って』より一部を抜粋して紹介する。(全2回の1回目/続きを読む)

監禁現場となったCの自宅周辺 著者撮影

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表札もない古アパートに一人で暮らすCを追う

 監禁場所となったCの自宅は、事件後両親が売り払った。Cがいつ刑務所から出所したか不明だが、刑期満了だとしても1999年7月には自由の身となっているはず。調べると2000年4月に埼玉のある都市に住所を移したことがわかった。

 車のハンドルを握り、メモした住所を頼りに住宅街を探す。そこは駅から徒歩5分の築20年ほどの線路沿いにあるアパートだった。2DKで家賃は約5万円。外階段のある造りで学生が入居しそうな古びた建物だ。表札もなく、郵便受けには名前もない。アパートから30メートルの距離に車をとめてエンジンを切った。

 1回目。昼過ぎから張り込むものの、夜まで動きはない。

 日にちを空けて数日通うが、人の気配がしない。本当にここでCは暮らしているのか不安になる。

 車での張り込みは難しい。不審車として警察に通報されないようにするのが鉄則だ。車内に誰かがずっと乗っていることが周囲に知られると、一気に怪しまれる。したがってエンジンは切らなければならない。天敵なのは「暑さ」「眠気」「トイレ」だ。このとき季節は秋だったので、幸い暑さは問題なかった。

 これが夏だったら、窓の上を少しだけ開けて、熱中症との耐久レースを覚悟しなければならない。トイレは我慢だ。近くに公衆トイレがあれば問題ないが、そうでなければ地獄だ。最もやっかいなのは眠気で、午後のおだやかな日差しに誘われ、つい寝落ちしてしまうこともある。アパートの関係者に取材すると、男性がひとりで暮らしていることがわかった。