5回目。午前10時前、玄関の扉が開いて、ひとりの男性が出てきた。太い眉に髪型は自衛官のような丸刈り。中学時代の写真の面影がある。間違いなくCだ。そしてトランクス1枚の格好だ。170センチで60キロ台後半だった逮捕当時と比べると痩せているが、筋肉質の体を露わにしている。

 かごに入れた衣類を廊下の洗濯機に次々と放り込む。近くでバイクが走る音がした。するとCは警戒するかのようにじっとバイクが通り過ぎるのを目で追った。声をかけようにも距離がありすぎる。ほどなくして部屋に入ってしまった。午前10時42分、Cが外出する。階段を下り、駅の方向に歩いていくのを追跡するが、途中で見失う。

 8回目。思い切って玄関の呼び鈴を鳴らす。出てくる気配はない。電気メーターは回っている。もう1回押すが出てこない。

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9回目の張り込みでついに…

 少年たちの「その後」の取材を始めて約2カ月。後藤デスクに頼み込んで、張り込み取材をする日はニュース班から外してもらっていた。かといって、取材に専念できるわけではない。ほかの仕事もこなすことが前提だ。朝6時前に自宅を出て日中張り込み。夕方にはテレビ朝日に戻り、放送業務に携わり、午前1時ごろに帰宅して布団にもぐり込む日々。睡眠時間が削られていく。そこまでやってもなかなか成果が出ない。ニュース班のディレクターなのにニュースをやらない。何やってんだ。周りからそんな白い目で見られているような気がして、同僚と目も合わせられない。今日も空振りかもしれないと弱気になる日の朝ほどつらいものはない。

©kimtoru/イメージマート

 9回目。午前7時前、これまででいちばん早い時間から張り込む。朝から雨で肌寒い。午前9時40分、玄関を出たCは廊下の洗濯機を回しっぱなしにして外階段を下りてきた。急いでいるようだ。あとを追いながら声をかけるタイミングを計っていると、近くの月極駐車場にとめてあった古いセダンに乗って去っていった。時間に余裕がある帰宅のタイミングを狙おう。待つこと2時間、駐車場の方角からCが歩いてきた。絶好のタイミングだ。僕は車から降り、走り出したい気持ちを抑えながらCに近づき声をかけた。事前に手紙を郵便受けに投函しておいたせいか、Cもすぐに取材だと察知したようだ。

次の記事に続く 太ももを鉄球で数十回殴打、顔面が変形したのを見て「でけえ顔になった」と…女子高校生コンクリ事件、元少年Cが語った事件への思い

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