認知症になる前の備えが自分らしく生きる助けになる

厚生労働省の推計(※)によれば、65歳以上の認知症の人の割合は12.3%、認知症の前段階とされる軽度認知障害(MCI)の人の割合は15.5%とみられる。両方を合わせると27.8%。実に4人に1人が認知機能にかかわる症状がある計算だ。いまやだれもが、認知症になり得る時代。認知症を過度に怖がることなく向き合うための方策を探った。

家族もかかわる財産管理は元気なうちに手を打つ

 「認知症になったら、もう手だてがない」と悲観的に考えていないだろうか。認知症に根本的な治療法はないが、早期診断・早期治療によって進行をゆるやかにしたり、症状を改善できたりするケースもある。「認知症かもしれない」と感じることがあれば、早めにかかりつけ医や専門外来などに相談しよう。

 また食事や運動などを見直して、周囲の人と交流を重ねるといったごく当たり前の健康習慣が、実は認知症予防の重要な手段となる。

 実務的な面では、早い段階で財産管理に関する手を打っておくといいだろう。認知症が進行していくと、預金の引き出しや不動産の取引が制限されるなど、元気なときのような自由な財産管理が難しくなってくる。将来的に医療や介護にかかるお金で家族に苦労をかけたくないなら、成年後見制度や家族信託、銀行の代理人サービスなどで備えておきたい。

※出典:厚生労働省「認知症および軽度認知障害(MCI)の高齢者数と有病率の将来推計」

 また認知症が進行し判断能力が低下してくると、遺言の作成にも難しさが伴う。認知症の状況によっては、せっかく作った遺言が無効と判断されることもありえる。財産の引き継ぎ方に自分の思いを反映したいならば、やはり元気なうちに遺言を作成しておくと確実だ。

 遺言は財産の分け方を指示するだけでなく、社会貢献にも活用できる。紛争に苦しむ人々を助けたい、子どもを支援したいなどの思いがある場合、遺言を使えば、死後に財産の一部をNGOなどに遺贈という形で寄付できる。

 だれもが認知症になり得る時代だからこそ、認知症になっても希望を持ち、自分らしく生きるための手だてを持っておきたい。