私らしく、軽やかに生きるためのソロ終活の備え方

終活・相続・コンサルタント
一橋香織さん(ひとつばし・かおり)
外資系金融機関を経てファイナンシャル・プランナーに転身。自身が争う相続を経験。家族の縁をつなぐ「縁まん相続」を実現すべく活動する。縁ディングノートプランニング協会代表理事。監修書に『終活・相続の便利帖』(日本法令)など。

老後、ひとりになったらどうしよう――。ふと、そんな不安が頭をよぎることはありませんか。女性は男性より長生きする傾向にあるため、シングルであっても、夫婦であっても、そのうち「おひとりさま」として過ごす可能性が高いのです。19年で7000件以上の相続・終活相談に対応してきた一橋香織さんに、おひとりさまに備える終活のコツを伺いました。

Q1

 夫婦ともに元気で終活に切実さがありません。何から始めればいいでしょうか。(62歳・専業主婦・夫婦二人暮らし)

A.夫婦二人暮らしは、立派な「おひとりさま予備軍」

「おひとりさま」というと、子どもや夫がいない一人暮らしの人を想像しがちですが、高齢夫婦であればどちらかが欠ければ、すぐに「おひとりさま」生活が始まります。「もし一人になったら、どこで、どう暮らしたいか」を話し合って、希望をエンディングノートに書き記しておきましょう。エンディングノートを「死ぬ準備」だと思うと気が重くなりますが、私はこれを「縁(えん)」を結び直す「縁ディングノート」と呼んでいます。ノートに自分の価値観や好き嫌いを書き出すことで、「今の生活は本当に私が望んでいたものか」と気づくことができます。40代、50代という若さでエンディングノートを書き始める方も意外と多いんですよ。私がご相談に乗った女性のなかにはノートを書く過程で「今の生活は本当に私が望んでいたものかしら」と気づき、熟年離婚という新たな一歩を踏み出した方もいらっしゃいます。

Q2

 高齢の母と二人暮らし。私が先に死んだら母が路頭に迷ってしまうのではないかと不安を感じています。(58歳・パート・80代の母と同居・独身)

A.親子でお互いのリスク管理を始めましょう

 親より子が先に亡くなる逆縁はゼロではありません。地震や豪雨など思いがけない災害に巻き込まれるリスクもあるでしょう。あなたご自身はもちろん、お母さまが倒れたとしても、延命治療や介護の希望がわからなければ、残された家族が苦労します。ぜひ親子でエンディングノートを用意して、万一の際に備えていただきたいですね。ただ、親御さんにいきなりエンディングノートを渡すのは悪手です。「お互い何があるかわからないから、一緒に書かない?」と誘って、親子でノートを広げてください。意外な本音や、互いの思いを伝え合う温かい時間が生まれますよ。

Q3

 夫に先立たれ、親類縁者もいないため身寄りがありません。私の最期を誰かが看取ってくれるのかと不安にかられています。(73歳・年金生活・夫と死別・子どもなし)

A.「トリセツ」を作って、最期まで自分らしく

 頼れる家族がいなくても、医師やケアマネジャー、死後事務の専門家など、あなたを助けてくれる人は必ずいます。万一の際に彼らが困るのは「あなたの希望がわからないこと」。「延命治療はしてほしくない」「お葬式は明るくしてほしい」。そんな自分の「取扱説明書(トリセツ)」として、エンディングノートを用意しておきましょう。以前、私が死後事務を受任した90代の女性は、エンディングノートに「ルイ・アームストロングの曲を生演奏で流してほしい」と書いていました。おかげで、私たちは葬儀にピアノ奏者を呼び、ご友人と一緒に笑顔でお見送りすることができました。思いを伝える手段があれば、最期まであなたらしく過ごすことができます。

Q4

 遺言書を作るつもりですが、法的効力のないエンディングノートは書かなくてもいいかと思っています。(70歳・無職・子どもは独立)

A.「遺言書+縁ディングノート」はセットで準備

 遺言書は「財産をどう分けるか」という相続の意思を示すものですが、事務的で冷たい印象になりがちです。なぜその分け方にしたのか、そこに込めた「親心」までは伝えきれません。例えば、長男に多くの財産を残す場合、遺言だけだと次男は不満を持つかもしれません。でもノートに「先祖代々の土地を守ってほしいから苦渋の決断をした。二人とも同じように愛している」という言葉があれば、納得感が生まれます。法的な書面(遺言)を、感情(ノート)で補完する。このセットがあって初めて、争いのない相続になるのです。

Q5

 苦労して貯めたお金。会ったこともない親族たちには渡したくありません。何か手段はありますか。(68歳・元教員・独身)

A.「遺贈寄付」で応援するという選択肢も

「疎遠な親族には渡したくない」というお気持ちなら、死後に残った財産を応援したい団体へ遺贈寄付にしてはいかがでしょうか。きょうだいや甥姪には遺留分がないため、遺留分侵害を心配する必要はありません。また、3親等以内に相続人がいない方が遺言を残さずに亡くなった場合、財産は最終的に国庫へ入ります。お金の使い道に自分の思いを反映したいという方は少なくありません。「子どもたちの学びを支援したい」「紛争で苦しむ人を支えたい」など、ご自身が大切にしている価値観に合わせて寄付先を選べます。