また、民事責任についても、民法によって「動物の占有者は、その動物が他人に加えた損害を賠償する責任を負う。ただし、動物の種類及び性質に従い相当の注意をもってその管理をしたときは、この限りでない」(第718条1項)と規定されている。
大型犬の飼い主は、70代の男性であった。では、彼は「相当の注意」をもって、犬を管理していたのか? 裁判では「1年前の出来事により、犬がリードをひきちぎることは想定できたのにもかかわらず、鎖ではなく、相変わらず散歩用のリードで係留していた。
危害を加えなくても1500万円の損害賠償
さらに、そのリードは1年前のものと同じで、修理をしたものだった」といった理由を挙げ、「相当の注意」をもって管理していたとはいえない、とした。
その結果、この飼い主は、甲府簡裁から過失致死罪で罰金50万円の略式命令を受けるとともに、民事責任では、飼い主の管理・注意義務違反として5433万円の支払いが命じられた。なお、犬が直接、危害を加えていなくても、損害賠償が発生することもあり得る。
原付バイクに乗っていた男性が、前方から急に飛び出してきた大型犬を避けようとするも、接触してしまい転倒し、足を骨折した案件では、飼い主の女性に1500万円の損害賠償の支払いが命じられているのだ。犬は従順だ。その一方で、暴れれば手に負えなくなる動物でもある。そのことを理解しておかないと、他人を傷つけ、突然大きな借金を背負うこともあり得るのだ。
しつけだけでは防げない高額賠償の恐怖
【破産しないために】
犬が人に危害を加えた場合、裁判では「相当の注意をもって、犬を管理していたか」が大きな焦点となる。まずは、犬のしつけをしっかりと行い、人などに危害を加えないようにすることが大切だ。しかし、それだけでは「相当の注意」をクリアすることは難しい。
「自宅」「散歩」「ドッグラン」など、犬の行動範囲をつかみ、それぞれのシーンで、危害を加えさせないための措置を講じる必要がある。犬を庭で放し飼いにする場合は、絶対に脱出できないようにする。係留する場合は、安直にリードを選ばず、犬の力を考慮しながら、太さや長さ、つなぎ方を決める必要がある。散歩する場面でも、然りだ。こうした配慮を通じて「相当の注意」を徹底することが、大事だといえよう。