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福良さんありがとう。オリックス最終戦、アホみたいに泣いた

文春野球コラム ペナントレース2018

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栗山監督の名参謀だった福良さん

 試合が進んで9回表、オリックスベンチでは好投した東明大貴(7回6被安打2失点)に福良淳一監督がずっと何か話している。福良さんは今季限りの退任を発表された。東明に伝えておきたいことがあるのだろう。

 9回裏、ファイターズのマウンドは守護神、石川直也だ。すっかりたくましくなった。性格も切り替えがきいてクローザー向きだ。多少失点してもそこから粘れるようになった。要は勝てばいいんだ。この日もT-岡田に12号ソロを打たれ、ヒヤッとさせたが、1点差を守り切り、2対1の勝利。

 試合が終わった。栗山英樹監督が福良さんのもとへ駆け寄って握手する。それから中田翔が出てきた。帽子を取って挨拶する。福良さんはにこやかに握手して、ポンポンと中田の肩を叩く。これはまいった。アホみたいに涙が出てくる。

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 福良さんは栗山監督の名参謀だった。1年目、監督経験のない栗山さんの考えを先読みして、やりやすいように先手先手で現場をまわしていった。栗山さんが気がつかないところは全部福良さんが拾っていった。福良さんは全体が見える人なんだ。現場の叩き上げだ。人のこともていねいに見る。中田翔は高校の恩師に対するような表情をした。だって鎌ヶ谷の2軍監督だったもんな。

試合前にメンバー表を交換する福良監督と栗山監督

みんな、野球から出て行かないでくれ

 この日、引退会見をした小谷野栄一はこう語った。

「今日もゆっくりお話しする機会つくってくださって、さっきも病気のことも言いましたし、いちばん大変だったときにいちばん近くで見守ってくださって、支えてくださって、こういう人になりたいって。福良さんと出会ってなかったら、こんなに野球やれなかったと思うんで……」

 パニック障害を抱え、プレーはおろか外出も出来なくなった小谷野を見守り、ひとつずつやれることをつくってやって、2軍戦で打席に向かえないでいれば、審判に言って少し時間をもらったり、本当に細やかな気遣いをされていた。小谷野は「人のいいところを見られる人」「憧れというか尊敬する存在」と語る。

 福良さん辞めないでくれよ。小谷野も辞めないでくれよ。矢野謙次辞めないでくれよ。石井裕也辞めないでくれよ。松井稼頭央も、大隣憲司も、新井貴浩も、後藤武敏も、杉内俊哉も、浅尾拓也も、岩瀬仁紀も、荒木雅博も、みんな書ききれないよ。野球を終わらせないでくれ。野球から出て行かないでくれ。

 テレビを消してベランダに出たんだ。見事な月だ。虫の声だ。今夜、ファイターズはCS進出を確定させた。西武は連勝が続いている。もう、どうしたって届かない。もうすぐ9月が終わるんだよ。

附記 :宮西投手のホールドポイント日本新記録達成の瞬間に関して、「交代完了のタイミングではないか?」というご指摘をいただきました。なるほど、それはそうですね。(文中、CM明けの)8回表ハムの攻撃時点では、まだ宮西投手が回またぎする可能性が残ります。だから正しくは8回裏、浦野投手が登板し、継投が成立して「ホールド確定」ですね。ありがとうございます。

シーズンの終わりを告げるオリックスのポスター ©えのきどいちろう

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