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ノーベル賞受賞・本庶佑教授が語った オプジーボと従来の抗がん剤の「決定的違い」

「当時は免疫療法が効くなんて信じる人はほとんどいませんでした」

source : 文藝春秋 2016年5月号

genre : ライフ, 医療, 社会, サイエンス

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効果が長く続く

立花 日本では、2014年7月に厚労省からメラノーマに対する治療薬としてニボルマブが薬事承認を受け、その年9月に「オプジーボ」として発売されますね。話題になりはじめたのはこのあたりでしょう。昨年12月に、肺がん(非小細胞肺がん)に適応拡大される前後から一気に注目度が上がりました。

免疫薬「オプジーボ」

本庶 今は、腎がんとホジキンリンパ腫(血液のがん)の申請も済んでいます。毎年2つ、3つ、どんどん承認が進んでいくと思いますね。アメリカのNIH(国立衛生研究所)のHPを見るとわかりますが、現在様々ながんを対象に、ニボルマブの臨床試験が200種進められています。すべてのがんに同じように有効かはまだ分かりませんが、胃がんも、頭頸部がんも、膠芽腫(こうがしゅ/脳腫瘍の中で最も悪性度の高いもの)も、卵巣がんも入っています。いろいろな種類のがんに効く可能性があるという点は、これまでの抗がん剤とちがうところなんですよ。

 卵巣がんについては、京大の婦人科でも小規模な臨床試験を行いました。この時は18人に行って、3人は非常によく効いた。腫瘍がずっと小さくなって全然再発しない。いちばんよく効いた60代の女性は、京大病院で余命3カ月と言われていましたが、治療をはじめて4カ月で完全にがんが消えた。今ではゴルフまでして元気そのものです。効く人には非常によく効くのです。

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立花 逆に言うと効かない人には効かない?

本庶 そうです。さきほどの2014年の論文を見ても、70%の人は1年を超えても生き続けたけれど、30%の人は1年以内に亡くなっているわけですから。

立花 ただ、効く人には長く効くわけですね。

京都大学発の新薬 ©時事通信社

本庶 そこがこれまでの抗がん剤とは違う、もう一つの特長です。これまでの抗がん剤だと、時間の経過とともにどうしても生存率は落ちていって最後はゼロに近づいていきます。患者さんの視点から重要なのは、この生存率(「治療後、何年生きているか」)のはずです。

卵巣がんが消えた

 ところがこれまでの抗がん剤は、腫瘍が小さくなることを「効いた」としていた。一時的にがんが小さくなっても、がんが治ったとは言えない。再発したり、最初に発生した場所とは別の臓器に転移したりして亡くなってしまったら同じことです。ニボルマブによる治療は、効果が長続きする。これが従来の抗がん剤とはまったくちがうところなのです。

(構成:緑慎也)

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