資産を生かす、未来につなぐ
これからの不動産・土地活用
不動産は、安定した収入を期待でき、次世代へと受け継ぐことのできる大切な資産だ。その価値を生かすには、時代の変化を捉え、目的に合った活用方法を選ぶことが重要になる。本特集では、これからの不動産・土地活用に必要な考え方を有識者に聞くとともに、実践する際に知っておきたいサービスを紹介する。
不動産を取り巻く環境は激変「賃貸経営」の意識が重要に
不動産を取り巻く環境はここ数年で大きく変わった。いま資産形成や相続対策として不動産を活用するには、どのような考え方や戦略が必要か。不動産コンサルタントの後藤一仁氏にアドバイスしてもらう。
上昇・価格維持、徐々に下落、下落の三極化へ
後藤 一仁氏
国土交通省の2026年の地価調査(基準地価、7月1日時点)によると、全国平均では全用途平均・住宅地・商業地のいずれも5年連続で上昇した。ただし、上昇幅はほぼ横ばいであり、地価の上昇は落ち着き始めているようにも見える。
不動産コンサルタントの後藤一仁氏は「全国平均だけでは現在の不動産市況の実態は捉えにくい」と指摘する。確かに東京圏・大阪圏では上昇幅は拡大している。地方は人口減少で需要が弱まっている地域がある一方で、半導体メーカーの工場が進出した地域などでは高い地価上昇が継続している。「今後は価格が『上昇または価格維持』『割高感が意識され適正価格へ徐々に下落』『下落』の3つのエリアに分かれる三極化が際立っていくでしょう。都心でも利便性の低い物件は、価格調整が進む可能性があります」。
こうした環境下で不動産投資や土地活用を検討する場合、どのような考え方や戦略が有効か。後藤氏は「従来の不動産投資のやり方や考え方は通用しない」と釘を刺す。これまでの不動産投資を支えてきた要因の一つが、日本の超低金利だ。金融機関から低い金利で資金調達し、家賃収入でローンを返済することで資産形成できた。しかし金利のある世界に突入し、建築費や修繕費の高騰も激しい。人口減少は本格化し、空き家も増加が予想される。「不動産を取り巻く環境は、ここ数年で完全にフェーズが変わりました。『不動産投資』ではなく『賃貸経営』という意識をこれまで以上に持つことが肝心です」と後藤氏は強調する。
条件の悪い物件には手を出さないのも経営戦略
経営である以上、重要になるのは物件の競争力だ。周辺の競合物件と比較してどのような優位性があるか、オーナー自身が見極める必要がある。「例えば、単身者向けの物件では独立した洗面台の有無が競争力を左右する場合があります。条件が整った物件が高額であれば、オーナー自身が手を加えることで、それらの高額物件に対しての競争力を持たせるという発想も必要です」。物件の購入価格に対して、どれくらいの家賃収入が見込めるかを表す利回りの高さだけで判断することも避けたい。「駅から遠い」「学校の統廃合や商業施設の撤退が進んでいる」など、高利回り物件には理由がある場合が多いという。「いくら利回りが高くても、条件の悪い物件には手を出さない。それも重要な経営戦略です」。
さらに、そのエリアの災害安全性を把握するため、自治体が作成するハザードマップを確認することも欠かせない。相続した物件などを含め、所有する土地についても、賃貸経営に適した場所かどうかを見極めたい。適さない場合は、売却や不動産の遺贈寄付を検討することも選択肢だ。
取得や活用を進める際には、収支計画の前提も確かめる必要がある。「不動産会社が提示する家賃収入や利回りが適正かどうか、地元の別の不動産会社に確認するといいでしょう」。家賃の下落や空室リスク、金利や修繕費の上昇などを織り込み、収支は保守的に見積もることが重要だ。家賃滞納への備えも、安定的な賃貸経営を続けるうえで欠かせない。家賃保証会社を利用する場合は、保証の範囲や条件を確認し、不測の事態でも保証が途切れない会社を選びたい。
すでに賃貸経営をしている人も、従来のやり方を見直すといいだろう。例えば金利が1%上昇した場合、手元に残る資金はどう変わるのか。借り換えや返済期間の変更を相談できるか、先回りして検討しておきたい。同時に、物件の魅力を高める工夫も有効だ。大がかりな工事を考える前に、入居者の目線で物件を見直し、できることから手をつけたい。
こうした経営を支える不動産会社選びでは、会社の名前や付帯サービスだけでなく、本来の管理や客付けの力を見極めることが重要だ。「賃貸では何年、何十年と付き合う相手です。担当者がオーナーの立場で考えてくれるか、人柄や相性も確かめてください」と後藤氏はアドバイスする。借入を活用し、家賃収入で資産を形成できる不動産の魅力は、これからも不変だ。だからこそ環境の変化を受け入れ、物件の競争力や収支を見直し続けることが肝心だ。信頼できる専門家とともに、オーナー自身が経営者として主体的に取り組むことが、安定的な賃貸経営につながるはずだ。