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結果も出せて目につくパフォーマンスができたら……

 鹿居を指導する亜大の佐藤監督はセビリア世界陸上で銅メダルを獲得し、シドニー五輪の代表にまでなったマラソンランナーだ。

「中距離に注目を集めたい」という鹿居の熱い想いについては、こう自論を語っている。

「パフォーマンスに関しては、賛否両論あるのはわかっています。でも、結果も出せて目につくパフォーマンスができたら、僕はすごくカッコいいことだと思うんです。自分もシドニー五輪の時にはそういう魅せ方をしたかったんですけど、緊張でそれどころじゃなかった。でも、今思い返すとQちゃん(高橋尚子)だったり、海外勢だったり世界で結果を残している選手って、そういう魅せ方を理解している選手が多いんですよね。

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 でも、例えば鹿居がもし日本代表に選ばれたとして、これまでやってなかったのに急にそういうことをやろうとしても難しいと思います。突然パフォーマンスをしても、結果を出せなければ叩かれるだけになってしまうでしょう。だから、そういう部分に関しても本気で考えるならば予行演習というか、早くから色々やってみて慣れていかないといけないのかなと思っています」

 

 シドニー五輪のレース前、高橋尚子がメディアの前でhitomiの曲に合わせて踊って見せたシーンは、今でも多くのファンの記憶に残っているだろう。

「スベったらどうしようという怖さもある」

 少子化の進む日本でいかにファンの目を引き、競技そのものに興味を持ってもらうのか――それはどの競技であっても死活問題になってきている。そこに必要なのは、競技自体の魅力はもちろんのこと、いかに目を向けてもらうかという前段の工夫だ。

 派手なパフォーマンスは相手への敬意や礼を欠くという意見もあるだろう。それでも鹿居はそれを理解した上で、自身の精一杯を見せることにしているという。

 

「相手に敬意を払うのはもちろんなんですけど、自分としては見てもらっている皆さんに感謝の気持ちも込めて、楽しんでもらえたらなという気持ちが大きいです」

 インカレの会場で、鹿居のコールを見にわざわざ観客席に足を向けた多くのファンがいたことは、その想いが伝わっている証左でもあるのだろう。

 大会場を後にすれば、普段の鹿居は実に礼儀正しい、真面目な青年だ。人気が出始めたことで「注目されているんだなというのと同時に、スベったらどうしようという怖さもある」と苦笑する。それでも、日本中距離界の魅力をアピールするために、鹿居はパフォーマンスを続けている。

 

 今月末には福岡で、日本最高峰の舞台・日本選手権が開催予定だ。

 鹿居はそこで、どんなパフォーマンスと走りを見せてくれるだろうか。

「まだまだ今季はここまで満足いく結果を出せていません。悪目立ちしかしていませんから……やっぱりやるからには日本選手権の決勝の舞台で、思い切ってパフォーマンスをやりたいなと思います」

 写真=末永裕樹/文藝春秋