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無上のやりがいと難しさ、大変さ

 このコラムが公開されるのは7月7日だ。……七夕と言えば、ヤクルトファンにはいまだ癒えぬ苦い思い出がある。最終的に「96敗」を喫することになる17年シーズンの7月7日。この日、低迷するチーム状況を打破するべく、新クローザーとして任命された小川泰弘が抑えとして初登板を果たした。それまで抑えを任されていた秋吉亮が、6月30日の対阪神戦で右肩甲下筋の肉離れを起こし、「あと一人」という場面で緊急降板。非常事態の中での配置転換だった。

 8対3と5点リードで迎えた9回表。大量リードに守られ、いわば慣らし登板の意味合いもあったことだろう。しかし、この回にまさかの6失点を喫し、チームはなす術もなく敗れた。「七夕の惨劇」とでも称したくなる悪夢のような一夜だった。

 あれから3年が経過した。試行錯誤の末に、チームの守護神として石山に白羽の矢が立った。名クローザーとして活躍した高津監督のお墨つきだ。今年から一軍投手コーチを務める斎藤隆もまた日米でクローザーとして活躍した好投手だった。高津監督、斎藤コーチの指導の下、石山が最終回のマウンドに立つことが決まった。

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 18年シーズン途中から抑えを任されることになった石山に「クローザーの楽しいところと大変なところは?」と尋ねたことがある。その際に彼は小さく笑いながら、率直な心境を吐露している。

「楽しさはないです(笑)。勝ったときにホッとはするけど楽しくはないです。だけど、やりがいはものすごくあります。でも、それ以上に難しさの方が大きいです。先発、中継ぎ投手たちがみんなでしっかり試合を作ってくれた場面で、自分が台無しにしたり、負けたりしたら、“申しわけない”というだけでなく、“どう取り返していいかわからない”と、かなり落ち込みます。でも、勝利したときにはみんなが笑顔で迎えてくれるので、とても難しいけど、やりがいはすごくありますね」

 間違いなく、6月26日の対巨人戦のことで「かなり落ち込」んだことだろう。「どう取り返していいか」と悩んだことだろう。しかし、マウンド上の失敗はマウンド上で取り返すしかない。7月1日の対広島戦では、ピンチを招いたものの、石山は今季初セーブを挙げて、チームの勝利に貢献した。ベンチで喜ぶ高津監督の表情は晴れやかだった。

 例年とはまったく異なるレギュレーションで行われる20年ペナントレースは一進一退の攻防が続いている。チーム浮上のためには石山の右腕が欠かせない。本人は「抑えた試合よりも、打たれた試合のことばかり記憶に残っている」と語るが、それもまた一流クローザーの誰もが通る道程なのだろう。頼れる守護神への成長過程をつぶさに見つめることができる幸福を噛みしめながら、これからも石山の一挙手一投足に声援を送っていきたい。

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