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withコロナの現場取材〜フリーランス記者はどうしているのか?

文春野球コラム ペナントレース2020

2020/07/01

 1年前、いや半年前にも想像できなかったことだが、新型コロナウイルスという未知のウイルスは我々の日常を大きく変えた。それはエンターテインメントやスポーツの分野において顕著であり、もちろんプロ野球も例外ではない。

 そのプロ野球は、スポーツ界の先陣を切るように6月19日に今シーズンの開幕を迎えたが、今はまだ無観客。当然、そこにファンの姿はなく、球場を彩ってきた歓声も、熱い応援もない(音声により、これを再現している球団もあるが……)。

 そして、プロ野球を取材する者の日常も大きく変わった。感染拡大防止の観点から、現在は取材にさまざまな制限が設けられている。球団によって多少の違いはあるようだが、「密」を避けるために球場で取材できる記者の数も限られ、筆者のように通年パス(NPBパス)を持たないフリーランスは、原則として球場に行くことができない。

フリーランス記者のプロ野球取材とは

 今からちょうど10年前、ヤクルトを取材して定期的にコラムを書く仕事を始めた。その時に決めたことがある。自分の視点でチームや選手を語るのではなく、選手が何を考え、どんな思いでプレーしているのかを、彼ら自身の言葉をベースにして読者に伝えよう、と。そうして2010年春にスタートしたのが、現在はウェブサイトのAERA.dot(アエラドット)で不定期連載を続けているコラム『燕軍戦記(つばめぐんせんき)』である。

 だからこの10年、ひたすら球場に足を運んで、選手のみならず監督、コーチ、スタッフや関係者に話を聞いてきた。神宮の試合はほぼ全て取材に出向き、近場の東京ドームや横浜スタジアム、交流戦ではZOZOマリンスタジアムやメットライフドームにも、都合がつけば足を延ばした。経費の出ない仕事ゆえ、なかなか遠征について行くことはできなかったが、2015年の日本シリーズでは自費で福岡まで飛んだこともある。

 コラムの配信は基本的に月に1、2本程度なので、そこまで熱心に足を運ぶ必要もなかったのかもしれない。仕事としての効率だけを考えるなら、執筆の直前に取材に行って、テーマに沿ったコメントだけを取るということもできただろう。ただ、どんな話がコラムの血となり、肉となるか分からない。継続して、小まめに話を聞くことによって見えてくるものもあるし、大して意味のないような話が後々生きてくることもある。

 文春スワローズ前監督・長谷川晶一さんの近著『プロ野球語辞典 令和の怪物現る!編』でも取り上げられている「下町スワローズ」を世に出すことができたのは、何気ない会話からテーマが浮かんできた典型的な例だ。だから、シーズン中はできるだけチームのスケジュールを優先して、せっせと球場に足を運んできた。

自宅なのにスーツ姿!? 開幕戦のケジメ

 昨年まではシーズン開幕戦、もしくはホーム開幕戦には、ケジメとしてスーツ姿で臨むのが常だった。しかし、今年は6月19日の開幕戦は神宮に行けず、自宅でテレビ観戦。最初はスーツでテレビを見ようかとも考えた。いや、割とマジメに。

 在宅とはいえ、筆者にとってはあくまでも仕事の一環である。ヤクルト球団の配慮で、球場に行けなくともオンラインによるリモート取材に加えてもらってもいる。オンラインで顔出しをするのは取材時だけだが、家にいるからといってくつろぎながら試合を見るのは、気が引けた。

 さすがにスーツはやり過ぎかなと思い、選んだのはこの時期の通常の取材スタイルであるポロシャツ。テレビの前に腰を下ろしてタブレットを開き、スコアブックを広げ、傍らに飲み物を置く。球場での取材時と同じような態勢で、スコアを付けながら試合を見ていると、家にいてもそれなりに緊張感が出てくるから不思議なものだ。

 激しい雨の中で始まった開幕戦は二転、三転する展開で、いきなりのロングランとなった。普段、球場でナイター取材をする際は昼食を取らず、試合前にガッツリ食べるようにしているのだが、在宅だとどうしても昼食をキチンと取るので、試合前に早めの夕食というわけにはいかない。家でも球場の取材時と同じように過ごしていると、試合を見ながら食事をする余裕はないが、人は緊張感があると空腹も気にならないようだ。

開幕戦で初回に右適時打を放った村上宗隆