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「マジで行きたかったです、沖縄…」故郷への凱旋直前に二軍落ち、ソフトバンク・リチャード選手の胸の内

文春野球コラム ペナントレース2022

2022/05/19
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課せられたのは「100本の柵越え」

野村大樹選手(左)と特打を行うリチャード選手(右) ©上杉あずさ

 2軍合流したこの日は、練習後に特打を行った。課せられたのは「100本の柵越え」だった。ヘトヘトになりながらバットを振りまくったリチャード選手だったが、結果的に柵越えは100本には到達せず。背番号と同じ52本だった。

 吉本亮2軍打撃コーチいわく、大事なのは実際に100本柵越えすることではなく、この練習に取り組む“集中力”がどれほど続くかというところにもあったという。吉本コーチもリチャード選手の沖縄に行けなかった悔しさやショックは充分に理解していた。だからこそ、一つそこを乗り越えて羽ばたかせるために……リチャード選手の現状と真っ向から向き合う。

 吉本コーチも3軍打撃コーチ時代からずっとリチャード選手を近くで見てきた存在だ。「僕も彼に育てられている」と話していたが、リチャード選手の開花を後押しするために、コーチ陣も様々な想いで共に歩んできたのだ。

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 藤本博史監督もきっとそうなのではないか。今回は冷酷な判断にも見えたが、リチャード選手をよく知り、共に歩んできて、期待してやまないからこそ、人一倍厳しく接しているようにも感じる。リチャード選手のポテンシャルは、誰もが持てるものではない。生かすも殺すも自分次第。とはいえ、首脳陣もリチャード選手の覚醒を願い、信じて寄り添ったり、突き放したりしながら、共に歩んできたのだろう。吉本コーチの話を聞きながら、入団からここまでのリチャード選手の姿を思い返した。

「マジで行きたかったです、沖縄……」。素直に悔しさも吐露したが、気持ちの切り替えという意味も込めて、ヒゲを剃ったというリチャード選手。しっかり切り替えて前に向かう姿勢がうかがえた。この悔しさは、絶対にこれからの糧として欲しい。次の沖縄開催試合のヒーローはリチャード、君だ! そして、誰もがリチャード選手の力を信じ、見守り、共に上の舞台を目指そうとしている。みんなの夢なんだと改めて思った。将来、笑ってこのことを振り返れる日が来ますように。

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