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“最高”なのは主将・岡本和真だけじゃない。巨人が誇る副将・吉川尚輝の頼れる背中

文春野球コラム ペナントレース2023

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逆境で輝く「選ばれし男」

 私は純烈というグループでの活動を通して、人気商売と言われる業種では「チャンス」と「タイミング」が非常に重要になっているということを学びました。

 吉川選手がブレイクと怪我による離脱を同時に果たした2018年が、純烈にとって初めての紅白歌合戦出場の年でした。もしこの年に紅白歌合戦の初出場を果たせていなかったら、今も初出場はできていなかったと思うのです。一度逃すと次はいつやってくるかわからない、そのチャンスをいかにつかむかという勝負の世界。

 活動しているうちに数えるほどしかない上、いつやってくるかわからないチャンスに備えなくてはならない。先走っても見送ってもいけないタイミングがあると思い、生きてきました。

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 プロ野球選手も人気商売の面があるはずです。しかし、圧倒的な実力を持つ選手にはこの「チャンス」と「タイミング」が当てはまらない場合があるのではないでしょうか。

 体が健康でいてくれたら……と、周囲から期待をされ続ける宿命を彼らは背負っているのでしょう。怪我や不調により落ち込んだ時間を正しく過ごし、V字回復をしてさらにステージを登っていく。

 吉川選手はチャンスを与えたいと思わせる圧倒的な実力と、正しく時間を過ごすクレバーさがあったからこそ次のチャンスを早々に呼び込み、今度はそれをしっかりとつかみ取り副キャプテンを任されるに至ったのだと思います。

 新体制となる今年のジャイアンツ。下馬評が高いとは言えないなか迎えるシーズン。吉川選手がチームの中心に立ち、試合に出続けてもらえることがチームの浮沈を担う大きな一因だと思います。

 体が健康でいてくれたら……から、体が健康でいてもらわないと……困る! という存在へと変化していると思うのです。

 岡本選手が日の丸を背負い、大爆発をしてヒーローインタビューに呼ばれたWBCの準々決勝の同じ日。オープン戦で吉川選手の手に牽制球が当たり負傷交代をしたというニュースが飛び込んできた時は、生きた心地がしませんでした。

 骨には異常がなく練習を再開していると聞いた時は、ホッと胸をなでおろしました。離脱の多い若手と思っていた吉川選手が、ボールを体に当てても試合に出続ける頼もしい副キャプテンになっているんだと胸が熱くなりました。

いざ、11年振りの日本一へ

 激しくうつろうプロ野球界。5年前に怪我による離脱でレギュラーをつかみ損ねた若手が、時を経て副キャプテンとしてチームの先頭に立つ。

 吉川選手のその背中を見て、スーパールーキーの浅野翔吾選手をはじめ現在の若手選手も数年後の主力、そしてスターへとステージを高めていく。

 この一連のドラマを見ることが「プロ野球を見る」ではなく、「プロ野球を見続ける」ことによって得られる特権だと思うのです。

 ジャイアンツが最後に日本一に輝いたのは、11年前。坂本選手と長野久義選手の「サカチョーコンビ」がチームの中心を担い、扇の要にラスボス・阿部慎之助選手が座っていました。

 今年のチームではサードとセカンドを岡本選手と吉川選手が固め、2人の間のショートを大ベテランの坂本選手が締める。帰ってきた長野選手をはじめ、経験豊富なベテランもチームを支えてくれるはずです。

 「野球は筋書きのないドラマ」と言います。今年のジャイアンツのドラマは、ハッピーエンドになるかバッドエンドになるか。

 結果は神のみぞ知るこのドラマを少しでも盛り立てられるように、メインキャストである吉川尚輝選手の活躍に思い切り感情移入しながら文春巨人軍一同で熱く応援していこうと思うのです。

 今季の文春巨人軍の応援を何卒よろしくお願いいたします。

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