【前回までのあらすじ】札幌の大学に通うマチは、恋人の浩太の家にあった雑誌を読んで狩猟に惹かれるが、狩猟免許を取りたいと話すと浩太はそれを歓迎せず、二人は別れることに。銃砲店の店主・堀井から紹介された猟友会会長の新田に同行し、初めて狩猟を見学したマチは、狩猟をやろうと思っていると友人のえみりに話すが、彼女もまた、それを理解してくれなかった。
マチは猟期のはじめに新田の鹿撃ちに連れて行ってもらったことで、改めて銃砲所持と狩猟免許取得への意思を強くした。
その一方で、マチ個人の人間関係は移り変わっていく。恋人だった浩太とはもともと強い結びつきではなかった。
それよりもえみりに狩猟への興味を含め、裕福な家に生まれた自分を否定されたことの方がマチにはこたえた。普段の表情も暗くなっていたのか、家事代行の吉田に気遣われる始末だ。これではいけない、とマチは自分を奮い立たせた。
師匠の新田らが主な活動場所としている石狩・空知地方のエゾシカ可猟期間は、十月一日から翌年の三月三十一日まで。マチは当初、今季中に自分も猟銃で鹿を撃てるようになりたい、と考えた。
マチは四月に入って早々に二十一歳の誕生日を迎える。そして、次の狩猟期間は約半年後の秋になるまで待たなくてはならない。空白の時間を過ごす前の、二十歳のうちにハンターになっておきたい、と思った。
「次の猟期でもいいんじゃない?」
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source : 週刊文春 2024年11月28日号