【前回までのあらすじ】札幌の大学に通うマチは、偶然手にした狩猟雑誌を読み、狩猟に惹かれる。銃砲店の店主・堀井から紹介された猟友会会長の新田に教えを乞いながら、狩猟免許を取得した。大学四年生となり、就職活動も終えた十月、マチのハンター二年目のシーズンが始まった。早速、新田たちと鹿撃ちをするため山に入るが、そこで単独で猟をする三石と出会う。

 

 就職の内定をもらった四年生の秋ともなると、卒論を早めに提出し終え、マチはそれまで就活に費やしていた時間を持て余していた。

 母が経営するジムでのアルバイトは、顧客あってのことだ。こちらの時間が空いているからといってシフトを詰め込めるわけではない。春になれば四年続けたこのバイトもやめなければならないから、今新規の会員を受け持つわけにもいかない。

 なら猟期のうちにできるだけ鹿を撃ちに出たい、と思っても、それも難しかった。同行できる先輩ハンターたちも社会人が多く、平日の昼間に遠出ができるわけではない。マチはやる気を持て余して、大学近くの堀井銃砲店に足を運ぶことが多くなった。

 とはいっても、安直に銃を買い足す訳にもいかないので、他の客がいない時に接客用スペースに座らせてもらい、猟関連の書籍やカタログを眺めることが多い。

「うちで店番のバイトとして雇ってあげられたらよかったんだけどねえ」

 そう言って、店主の堀井は少しすまなそうにコーヒーをすすめてくれた。

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source : 週刊文春 2024年12月19日号