ドラマを見てやたら視聴者がXとかで考察考察言い出すのはうるさい、言わせようとするドラマもうるさい、と亀和田さんが当欄で書かれていた、『海に眠るダイヤモンド』。

 私もこれはほんとに「考察考察ウルセエよ」と思いながらつい、惹かれるものがあって見続け、年末ついに終わり、思いがけないところに心を動かされてしまったのでそのことを書きたい。

 神木隆之介演じる「実直な青年・荒木鉄平=過去の男」と「ホストくずれのチャラ男・玲央=現在の男」には時を超えてどんな関係があるのか、というので最後までひっぱっていたが、結局は何の関係もなかったということが最終回でわかり、この「朝子さんが鉄平にそっくりだと思い込んだ、でも鉄平とはなんの関係もないチャラい玲央」という男が「この世界を救い」「未来に希望をつなぐ」。このラストって、よくあるやり方だしけっこう強引なもって行き方だった(ので考察勢にはいろいろつっこまれていた)が、そんなことよりもこのドラマが「映像による叙述トリック」を使ってたので虚を衝かれた。

神木隆之介 ©文藝春秋

 鉄平と玲央が「うりふたつ」であるということは、朝子の言葉でしかない。そして鉄平の写真は、常に鉄平が「シャッターを押す側」だったから「ない」。現在の玲央は鉄平にそっくりだと言われてもそれを確認することはできないから、そっくりと言われて信じているが、最終回に「当時の鉄平の映った8ミリ」が出てくる。それを見る2人。

「オレに……似て…るー?(戸惑って笑い)」「似て……ない(泣き笑い)」「似てない(よねー?)」「ない(泣き笑い)」って玲央と朝子さんで言い合うような「見るからに別人」なのだ。

 ……ということにドラマの中ではなっている、けれど私には「そっくり」に見えたんだが。その「そっくり」の具合が、郷ひろみにおける我修院達也(旧若人あきら。例えが古いが)みたいな「残念そっくりさん」なのではなくて「神木隆之介演じる鉄平」の良いところの上澄みみたいに、魅力的な青年に見えたのだが。粗い画面の中でびっくりしたような笑顔を見ると、朝子さんでもなんでもない私がちょっと泣きそうになってくる。……あの「白黒の鉄平」の1コマに、私はすっかり持っていかれてしまった。ネットでは「似てる」「いや似てない」と意見は二分されてるみたいだけれど、似てる似てないじゃなくて、あの鉄平は「鉄平の結晶」なんだよ! だから朝子さんも思わず泣いちゃってるんだよ! 玲央はまだあそこまで到達してないんだよ!

 などという意見はどこにも見ないので、ここに発表してみた。作者もそんな狙いじゃないとは思うが。

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source : 週刊文春 2025年1月16日号