東京女子医科大学の元理事長・岩本絹子容疑者(78)が、附属病院である足立医療センターの建設工事に関する背任容疑で、きょう、警視庁捜査二課共同捜査本部に再逮捕されたことが取材で判明した。

附属病院の足立医療センターは、東京都荒川区から足立区に移転して2022年1月に開設。この建設工事で岩本容疑者は、業務実態のない架空の「建築アドバイザー報酬」として、1級建築士の男(68)に対し合計約1億5200万円を女子医大に払わせた。これに加えて必要がなかった源泉所得税を納付させて、合計1億7000万円の損害を与えた疑いがもたれている。
このうち約5000万円が、岩本容疑者にキックバック(還流)された可能性が高いとみて、警視庁は再逮捕に踏み切ったもようだ。

岩本容疑者は、1月13日に新校舎の建設に絡んだ背任容疑で逮捕され、勾留期限まで残り1日に迫っていた。現時点で、警察は岩本容疑者の認否を明らかにしていない。
1級建築士の男は、岩本容疑者の側近だった女X(元女子医大・部長代行)に、多額のカネを現金で渡していたことが判明しているが、これは不正を隠蔽する目的のマネーロンダリング(資金洗浄)だった可能性が考えられる。
元側近の女と1級建築士の男は、被疑者として取り調べを受けているという。

架空の「建築アドバイザー報酬」は、1月に逮捕された容疑を含めると、合計3億円超。なぜ、このような多額の不正が可能だったのか?
岩本容疑者の元側近だった女子医大関係者は、次のように証言した。
「岩本先生の独裁体制に問題があったのは事実ですが、女子医大には彼女の手足となって動いた人間たちがたくさん存在しています。強制的に命令されて行動したのではなく、自ら進んで岩本先生に尽くしていました。それが結果的に女子医大の医療体制を瓦解させたと思います」
「申請手続きはデタラメだった」関係者が重要証言
再逮捕の容疑となった、足立医療センターの「建築アドバイザー報酬」。その稟議書(写し)を独自に入手した。申請も承認も同じ岩本容疑者となっている。まともな組織ではあり得ない手続きだ。

この稟議書は、2020年(令和2年)3月17日に申請され、承認(決定)されている。
だが、“アドバイザー業務は2019年(令和元年)4月に開始されている”として、1年間分を遡って支払うように仕組まれていたのである。
「本当に2019年4月から業務が開始されているなら、その前に稟議書の申請を行うのが常識ですが、岩本先生が理事長になってから(2019年4月~)、デタラメをやりたい放題でした。しかも理事会の議長役は岩本先生ですから、異議申立てをするようなことは不可能です。稟議書も理事会の当日に提出して、じっくり検討する時間を与えませんでした」(前出の女子医大関係者)

1級建築士は、嘱託職員として女子医大から毎月の給与も得ていた。だが、嘱託職員の給与と「建築アドバイザー報酬」は、別々の地方銀行が振込先に指定されていた。
2021年9月30日の支払いで、架空の「建築アドバイザー報酬」は終了。だが、翌年の1月19日、同じ名目で月額80万円の報酬を支給する稟議書が、理事会に提出される。振込先は、やはり嘱託職員の給与とは別の銀行口座だった。

申請者は、当時のナンバー2である常務理事の肥塚直美氏。岩本容疑者が解任された後、暫定的な理事長に就任した人物で、岩本容疑者とは長年にわたって親交が深い。この稟議書も申請日より遡って、2021年10月からの支給となっていた。
高額で、しかも不自然な手続きによって申請された「建築アドバイザー報酬」に、女子医大の理事や監事は本当に気づかなかったのか、疑問が残る。
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source : 週刊文春 電子版オリジナル