棋士の読みとは凄まじいものだ。相手の一手を見たその瞬間、大量の情報と画像(パターン)が頭の中に雪崩れ込む。

(ん? その一手は疑問では? よし、咎めて自分が優勢だ!)

 同様に自分が指した直後もそう。指した指先を引っ込めるコンマ何秒かの間に様々な感情が怒濤のように脳裏に浮かんでくる。

(うん、これで相手は手も足も出ないはず。このまま完勝だな……)

 これぞ棋士の先読み能力。我々を支える根底であり、プライドでもある。だが、ときに好手を指して大後悔をするときがある。それはこんなケースだ。

 少し前の話題だが、今年の1月6日、名古屋将棋対局場で指し初め式が行われた。皆で集まってリレー将棋をするのだ。これは新年のあいさつのようなものなので、決着がつくまでは指さない。つまり、全力の勝負では全然ない。

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source : 週刊文春 2025年2月27日号