【前回までのあらすじ】札幌の大学に通うマチは、狩猟免許を取得。就活も終え、二年目の猟期が始まった。マチは、山で痩せたクマを撃ったことを後悔する。その様子を見た堀井銃砲店のお婆さんの勧めでアヤばあを訪ね、二人で近くの山へ入ると、そこには三石勇吾が倒れていた。勇吾はマチに侮辱的な言葉を掛け、険悪な雰囲気に。その三日後、マチは動物園を訪れる。

扉からはスタッフジャンパーに作業ズボン、キャップ、長靴姿の男が出てきた。両手にバケツを持っている。長身と、細身で筋肉質な体形。やや腰を曲げるようにしてすり足気味。その体つきと特徴的な歩き方。
三石勇吾だ。
マチは直感した。顔は深く被ったキャップのつばでよく見えない。アヤばあの家で自分と対峙した時と同じ、どこか不貞腐れたような表情をしているのではないか、という気がした。
キリンは飼育員が来たことがわかったのか、長い足をせわしなく動かしてエサ台へと向かった。率直にいってかわいい。周りにいた客の何人かが、給餌タイムだとスマホのカメラを向ける。マチは上着のポケットに両手を入れ、キリンではなく飼育員を見ていた。
初回登録は初月300円で
この続きが読めます。
有料会員になると、
全ての記事が読み放題
既に有料会員の方はログインして続きを読む
※オンライン書店「Fujisan.co.jp」限定で「電子版+雑誌プラン」がございます。ご希望の方はこちらからお申し込みください。
有料会員になると…
スクープを毎日配信!
- スクープ記事をいち早く読める
- 電子版オリジナル記事が読める
- 解説番組が視聴できる
- 会員限定ニュースレターが読める
有料会員向けおすすめ記事
source : 週刊文春 2025年2月27日号