卒業、転勤、退職……春は出会いと別れの季節と言われるが、将棋界にいると3月の別れを強く実感する。主に学生の奨励会員が、年度替わりを前に自分の進路を再考するからだ。

 私の一門でも、4月を前に3人の弟子が奨励会を退会した。私は彼らのこと、そして過去の弟子たちのことを考えてしまう。

「今までお世話になりました」「学業に専念します」

 こう言って学生の弟子たちは奨励会を去る。奨励会員が棋士になれる確率は2割以下。年齢制限までまだ猶予があっても、当事者は肌感覚で分かるのだ。自分はこの先も「2割」に入ることは決してないのだと。

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source : 週刊文春 2025年4月3日号