(えどやねこはち 演芸家〈動物ものまね〉。1977年、東京都生まれ。2009年、父である四代目江戸家猫八に入門。11年に二代目江戸家小猫、23年に五代目江戸家猫八を襲名。19年に国立演芸場花形演芸大賞大賞、20年に浅草芸能大賞新人賞、芸術選奨文部科学大臣新人賞を受賞。24年より落語協会理事。)

 

「まずはやはり、江戸家代々の伝統、初春のうぐいすの声からお聞きください――

 “ホーーーー、ホケキョ!”」

 おもむろに小指を口にくわえたかと思うと、実に絶妙な間合いでもって奏でられるうぐいすの鳴き真似。そう聞いて、あなたは“どの顔”が思い浮かぶだろうか。現在、この芸を継いでいるのは、2023年、色物としては異例の襲名披露興行を成功させ、寄席でトリまで飾った五代目江戸家猫八、その人である。

 祖父が三代目江戸家猫八、父が四代目江戸家猫八です。初代が曽祖父で、二代目は初代のお弟子さんが見事につないでくれて、第二次世界大戦後、祖父に名跡を戻してくれたというかたちです。そんな家に生まれ育ちましたから、当然、いつかは自分も……という思いは漠然と持っていました。でも、父から「継いで欲しい」と面と向かって言われたことはありません。ただ、うぐいすの指笛だけは、「家芸」として習得してほしいと言われました。

 でも実は、手取り足取りコツを教えてもらえたことは一度もないんです。ただ、そういえばまだ子供の頃、お風呂の中で私の小さな小指を父が咥えて、軽くホケキョと鳴いてくれたことがありました。そのときの指の感触を、今も覚えています。

 何とも言えない茶目っけと色気があって、後年は俳優としてもお茶の間で愛された三代目。人前に出てくるだけでパッと場を明るくする天性の華があって、テレビ番組の司会者としても親しまれた四代目。そんな祖父や父と比べると、私は真面目で、芸人らしくテンションを上げるのも不得意、こうやってお話をしててもそんな感じしますよね? 自分でも自覚はあるんですよ(笑)。だから、後を継ぎたくないと思ったことは一度もないんですが、なかなか自信が持てませんでした。

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source : 週刊文春 2025年6月26日号