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朝乃山にウソをつかせたのは“タカリ”新聞記者だった

「週刊文春」編集部
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5月7日、朝乃山の横で取材班の車を睨むX記者
5月7日、朝乃山の横で取材班の車を睨むX記者

「すみません……」

 うなだれた様子の大関朝乃山(27)が、日本相撲協会の聴取に小誌報道を事実だと認めたのは5月19日夜。「事実無根」と否定してから24時間以上経った後だった――。

 

発覚後は支援者に電話で謝罪
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 小誌は先週号で、朝乃山が外出禁止期間などを定めている協会のコロナ対策ガイドラインに違反し、深夜のキャバクラ通いの“常習犯”だったことを報じた。

 協会の執行部が最初に事情聴取を行ったのは、小誌が高砂部屋に事実確認を求める質問状を手渡した18日の午後のこと。

「ここに書いてあることは事実なのか。後で嘘だとバレたら辞めなきゃいけなくなる可能性もあるぞ」

 質問状を手にした協会執行部の聞き取りに対し、朝乃山は「違います。(キャバクラには)行ってないです」と頑なに否定。協会は同日の取組に出場させた。

 翌19日午後、協会は発売前日に出回る小誌の早刷り記事を入手。取組前の朝乃山を慌てて呼び出し、再聴取した。関係者の証言を総合すると、こんなやり取りがあったという。

執行部「明日、文春にこういう記事が出る。大丈夫か。本当に行ってないのか」

朝乃山「行ってないです」

執行部「事実無根だということか」

朝乃山「事実無根です」

執行部「分かった。そこまで言うなら今日の出場は認める。ただし、記事は事実無根だと文春を個人で訴えろ。それが出場の条件だ」

朝乃山「分かりました」

 だが、朝乃山の話には辻褄の合わない部分があったため、「執行部の心証はクロだった。そこで取組後にコンプライアンス委員会の弁護士による再聴取を決めたのです」(協会関係者)。

 同日16時、小誌は「スクープ速報」で記事の一部を報道したが、協会の芝田山広報部長(元横綱大乃国)は、「(記事が)出されたから休場、とはならない」などと発言。朝乃山は同日の取組にも出場した。

富山へのV凱旋にも同行

 ところが――。取組後の再聴取で、コンプラ委の弁護士の一言が朝乃山の態度を一変させた。

「身の潔白を示すためにもスマホを確認しましょう」

 スマホにはGPSの位置情報などが残っている。ウソをつき通せないと観念した朝乃山は小誌報道を事実と認め、“完オチ”した。

 この事態に、朝乃山が属する高砂一門の総帥で、協会トップの八角理事長(元横綱北勝海)は激怒。「引退しても師匠になる資格がない、とまで明言したようです」(前出・協会関係者)。

 結果として深夜外出に加え、協会への虚偽報告と、2つの罪を重ねてしまった朝乃山。なぜ、こんなウソをついてしまったのか。

 角界関係者が明かす。

「実は、スポーツニッポンの相撲担当記者が、朝乃山にウソをつくよう、口裏合わせを持ち掛けたのです」

 この40代のX記者は、5月場所初日2日前の5月7日の夜10時半、神楽坂で小誌取材班の車のドアをこじ開け、恫喝していた。

「お前ら週刊誌だろ! こっちは素人じゃねぇんだよ」

 その後、キャバクラの前で待ち合わせていた朝乃山と一緒に西麻布に移動。会員制ラウンジが入居するビルに入っていった。

 そして深夜3時頃、朝乃山は若い女性とX記者に見送られてタクシーに乗り込み、午前3時半過ぎに高砂部屋へと帰宅したのだ。

 小誌は高砂部屋に質問状を手渡す直前の18日正午、X記者を直撃している。

――5月7日に、朝乃山関と神楽坂に行かれた?

「いや、いないですよ」

――その後に西麻布にも行っていますよね?

「行ってないですよ」

 そう言って立ち去ったX記者が直後、電話をかける姿を取材班は目撃している。

 X記者への直撃後、取材班はスポニチに質問状を送付。広報担当者は「X記者から聴取した」として、「神楽坂で朝乃山関と待ち合わせたことは事実です。その後、西麻布に行き、パーソナルトレーナーを紹介しました。大関と飲食はせず、午後10時くらいに別れています」と回答した。

 だが、小誌はX記者が午後10時半から午前3時過ぎまで朝乃山と一緒にいたことを確認している。X記者はスポニチ社内の聴取に虚偽の報告をしていたのだ。

 このウソに、朝乃山も追随せねばならなくなった。

「朝乃山は当初、キャバクラには行っていないが、西麻布に“治療”に出かけたと釈明していた。トレーナーによる治療ならば不要不急の外出にはならないと、口裏を合わせていたとみられる」(前出・協会関係者)

 朝乃山を窮地に追い込むことになったX記者は、スポニチの調査に対し、「今さらながら、『店には自分から誘った。自分が(行ってないと)言い張ろうと勧めた』と話しているようです」(スポニチ関係者)。

 このX記者は一体、どんな人物なのか。

「アルバイトから記者に採用され、事業部などを経てスポーツ部に配属。5年ほど前から相撲担当になり、朝乃山が初優勝した時には富山への凱旋にもついてきて、同じホテルに泊まったりしていた。取材熱心だが、力士に食い込んで一緒に食事をしたり遊んだりと、仲良くなることがゴールだと勘違いしているフシもあった」(スポーツ紙記者)

 ベテラン記者はこう憤る。

「Xは熱心に稽古を見に行くタイプではなく、注目されそうな力士に取り入るのが上手いだけ。炎鵬や翔猿ら人気力士にも接触しており、朝乃山の前は貴景勝とベッタリ。ただ、貴景勝は婚約した昨夏頃からXの言動を警戒し、次第に距離を置くようになった。相撲一筋の朝乃山より一回りも年上のXは本来、ガイドライン違反を体を張って止めるべき立場のはずです」

 加えてX記者は、キャバクラなどの飲食代を朝乃山に払わせていたという。

「朝乃山はコロナ前からの常連で、多いときで週3回は来店しています。一緒に来るのはスポニチの記者や電通の人。会計は平均で6万〜7万円くらいですが、スポニチの分も朝乃山が現金で支払っている。女の子の話では、閉店後、男女4人でバーへ行ったときも支払いは朝乃山。スポニチ記者がタカっていたんでしょう」(キャバクラ関係者)

 一連の動きを受け、5月22日、スポニチの社長が会見を開くという情報が記者間を駆け巡った。

「しかし、協会が待ったをかけたそうです。それこそ朝乃山とXの言い分が違っていたら問題がさらに複雑になる。この問題で怒り心頭の協会は、5月末頃を期限にスポニチに調査を要請しています」(前出・スポニチ関係者)

 現在、自宅謹慎中だというX記者にも電話や手紙で取材を申し込んだが、締め切りまでに回答はなかった。

 スポニチの河野俊史社長は小誌の直撃にこう語る。

「外部の弁護士も入れて、中立性と公平性を担保するための調査を真剣にやっています。あと相撲協会さんからの照会にもお答えしなければいけない。今後きちんと説明させてもらいます」

 スポニチの広報に改めて事実関係を問うと、「外部の専門家に調査を依頼中であり、事実関係が明らかになった段階で、必要な範囲で公表します」と回答した。

 朝乃山の正式な処分が出るのは6月以降とみられる。昨年、同様に「夜の店」通いをして虚偽報告をした阿炎の例に照らせば3場所以上の出場停止となり、幕下まで番付を落とす可能性もある。失った信用は、土俵で取り戻すしかない。

5月場所は7勝5敗3休に終わる

source : 週刊文春 2021年6月3日号

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