(たてのひろし 絵本作家。1968年、神奈川県生まれ。幼少期より画家の熊田千佳慕に師事。2005年より絵本制作を始め、09年『しでむし』でデビュー。『つちはんみょう』で小学館児童出版文化賞受賞。さらに文章を手がけた絵本『ねことことり』で日本絵本賞受賞。最新作は『うさぎのしま』。)

 

「舘野鴻さんと言えば、すごくリアルな虫の絵を描く絵本作家さんでしょう?」って言われると、なんだか居心地悪いんですよ。むず痒くなっちゃう。いや実際そうなんだけど、でも、なんだかね。

 それに、2020年に出した『がろあむし』以降、虫の細密画の絵本は描いてないから。絵本の文章のほうを書いてみたり、小説を書いてみたり。取材に4年をかけた『うんこ虫を追え』はエッセイや研究発表的な側面が強い本だし、一方、今年6月に出した『すずめばち』では美術館で原画を公開制作するっていう前代未聞の方法をとった。だからどれも絵のタッチが全然違うんだけど――自分の中では、ちゃんと一貫してるつもりなんだよね。つまり、俺は、子ども向けの絵本という“商品”を作ってるんじゃない。“表現活動”として絵本をやってるんだって。

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source : 週刊文春 2025年8月14日・21日号