(あんどうたまえ/俳優 1976年、東京都出身。初の著書『とんかつ屋のたまちゃん』(幻冬舎)は本人朗読のオーディオブックも配信中。今後の出演は舞台『リア王』10月9日〜11月3日(東京)、11月8日〜16日(大阪)/映画『平場の月』11月14日公開/Eテレ『未病息災を願います』など。)

私は生まれも育ちも東京の下町の西尾久、実家は「どん平」というとんかつ屋なんです。いまは父から兄が店を継いで建て替えましたが、子供の頃は戦後すぐに建てられた木造の2階建てだったんです。1階の3分の2を喫茶店に貸して、残りがとんかつ屋。2階には店の宴会場がありました。
私と兄、両親と祖母という私たち家族は、その宴会場の座敷に布団を敷いて寝起きしていました。自分の部屋と呼べるものはありませんでした。宴会が入っていないときは六畳、八畳、十五畳と続く広間を自由に使っていましたね。
両親はいつもお店で働いていて、小学校から帰るとまずカウンターを覗く。すると、母が片付けをしていたり、父がとんかつを揚げていたりする。
従業員や常連さん、近所のおじさんおばさん、といつも誰かが出入りしていて、静かな時間はありませんでした。カウンターで宿題を広げていると、酔っぱらったおじさんが「がんばってんな」と声をかけてくるような感じでしたね。
俳優の安藤玉恵さんは1976年、東京都荒川区の西尾久に生まれた。実家の「どん平」には30歳で結婚するまで暮らした。「どん平」は商店街の中心にあり、名物はおからで煮込んだ豚肉を揚げるとんかつ。父親は「ボルシチから着想を得た」とよく話していたという。
どう考えても「ボルシチ」ではなく、「角煮」なんじゃないかと私は思っていましたけどね(笑)。
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source : 週刊文春 2025年9月4日号






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