「毎年、かなりの人々が銃で死ぬ。気の毒だが、憲法修正第二条(銃所持の権利)の代償だ。銃を持つ自由にはそれだけの価値がある」

 そう言っていた右翼インフルエンサー、チャーリー・カーク(31歳)が射殺された。

 9月10日、カークはユタ州のユタ・ヴァレー大学の屋外劇場で3000人の学生の前で討論中に首を撃たれ、滝のように血を流す動画がネットで拡散された。カークはトランプを熱烈に支持し、銃規制と人工中絶とLGBTと移民に反対した。そして自分に反論する人々を公開で論破するショーを売りにしていた。この日も全米の大学を回る「私を論破しろ」ツアーの初日だった。カークの論破術に理屈や証拠は必要ない。「アメリカはパレスチナ人虐殺に加担すべきではない」という討論者に対してカークはこう断言した。

「パレスチナ人なんて存在しない!」

 相手は呆れて絶句。女性から「あなたは中絶に反対ですが、もし、あなたの娘さんが10歳でレイプされて妊娠しても、その子を産ませるんですか?」と尋ねられた時も「はい!」と胸を張って相手を呆れさせた。

 その他、暴言は数えきれない。「黒人女性は脳の力が足りないので白人の枠を奪うことしかできない」「黒人は奴隷制だった頃のほうが犯罪が少なかった」「ガザの人々が殺されるのはハマスのせいでイスラエルは悪くない。第二次大戦で日本人が殺されたのは自業自得でアメリカは悪くないように」「イスラム教は左翼がアメリカの喉をかき切るための剣だ」……。

 だが、この攻撃性でチャーリー・カークは億万長者になった。シカゴ郊外に生まれたカークは誰でも入れるコミュニティカレッジに入学するが中退。ところが2012年、18歳で「ターニングポイントUSA」という学生右翼団体を設立。当時は若者層の草の根支持でオバマ大統領が生まれた後だったので、若者に声が届くカークの団体には保守系政治家や実業家から莫大な寄付がなだれ込んだ。

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source : 週刊文春 2025年10月2日号