『スクープ 医療崩壊 不足する医師 虫垂炎で死ぬ日は近い』

〈A市にある、B市民病院が先日、とうとう手術症例の受け入れを止めた。理由は医師不足。リスクの高い科、特に外科医が急速に減っており、診療の維持ができないという……〉


「なに読んでるの、センセ」

 後ろから看護師の()(もと)が覗き込んできたので、僕は無言でスマホの画面を見せた。

 一目見て悟ったらしく、木本はため息をついて、

「嫌な世の中ねぇ。あそこ、ここらじゃ大きくて、わりと患者さんも多かったのに」

「明日は我が身。世知(せち)辛い世の中だよ、まったく」

「B市民病院って、たしか、うち……A市立病院から電車で二駅じゃなかったっけ。患者さん、結構こっちに流れてきそう」

 マジかぁ、と言って僕は外来診察室のベッドと、横に置かれた処置台の上を見た。

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source : 週刊文春 2025年11月13日号