NHKの『未解決事件』を初めて見た時は震えた。グリコ森永事件で、途中の再現VTRの中に出てきた「大津サービスエリア」が、まさに昭和のサービスエリア感をものすごく再現していて、その「犯罪が起きた空気感」みたいなものを画面からビンビンに感じさせ、「どんなホラー映画よりも、犯人が捕まってない凶悪事件のほうが怖い」と思わせた。

 ……のだが、この『未解決事件』も回を重ねるうちに、初回の衝撃は薄れる。根本的問題として、「未解決の事件」だから「犯人はどこに」という問題が生じる。そこをどうするかといえば、「関係者が推理する」しかない。その部分になるといきなりリアリティがガタッと下がって作り話っぽくなる。「裏を知ると称する人物が出てきて、ホシはアイツだ……とか吹きまくってる」だけじゃねーか、となるのだ。以前放映された「スーパー・ナンペイ事件」の回も、なんだか「コイツが犯人だ」って名指しされてたが、ホントかよ。もう、犯人の推理はいいから、ただひたすら事件についての事実を詳しく再現してくれたほうが怖くていい。

 そんな不満の声が高まったのか(どうかは知らないが)、11月1日放送分は「逃亡犯へ 遺族からの言葉」という、『未解決事件』としては新機軸を打ち出してきた。

 なんと、ここで取り上げた「名古屋主婦殺害事件」の容疑者が放送2日前に出頭するというドラマチックな展開でこれはすごい、と見てみたら。

 そっちよりも、最初に取り上げられた「別府ひき逃げ殺人事件」のほうがすごかった。

 容疑者は顔写真入りで指名手配されている。しかし捕まらないのである。けっこう印象的な顔なのに。

「別府ひき逃げ殺人事件」で手配中の八田與一容疑者 ©時事通信社

 事件の時一緒にいた被害者の友人が、どうか何か情報があったら、どんなことでもいいので知らせてほしい、とカメラに向かって言うのを見て、

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source : 週刊文春 2025年11月20日号