主題歌がいいドラマは、いいドラマである可能性が高い。ここで言う「いい」は、楽曲自体の良さは前提として、「主題歌」というだけあっていかにドラマの主題と合致しているかだ。前クールの傑作『僕達はまだその星の校則を知らない』(カンテレ)の「修羅」や、前々クールの『続・続・最後から二番目の恋』(フジテレビ)のエンディング曲「ダンスに間に合う」もハマっていた。楽曲決定までには様々なしがらみや制約があることが予想されるが、おそらく最終決定権を持つプロデューサーが、ドラマの主題を第一に考え、それらを突破している証のひとつだからだ。信頼ができる。それでいうと、今季は『ぼくたちん家』の「バームクーヘン」が抜群だ。ザ・ハイロウズの曲をメインキャストである及川光博・手越祐也・白鳥玉季がカバーしている。甲本ヒロトらしい素朴かつ深みのある歌詞が、可愛らしいアレンジで多幸感を増していて、歌っている3人がたまらなく愛おしくなる。『ぼくたちん家』もそんなドラマだ。

及川が扮しているのは、心優しい冴えない感じのゲイのおじさん・玄一。普段のキラキラしているミッチーを封印して演じている。索を演じる手越もイメージとは真逆なクールなゲイという役どころ。黒髪にしていることもあり、SNS上では「手越くん出てた?」と言われるほど、見事に役になりきっている。物語は、「井の頭アパート」に引っ越してきた玄一が、そこに住む中学3年生のほたる(白鳥玉季)に3000万円で「あなたを買います」と父親のふりを依頼されるところから始まる。本当の父親(光石研)は離婚しており頼りにならない。そして母(麻生久美子)は会社のお金を横領し逃亡中だというのだ。その境遇を聞き、困っている人を放っておけない性分の玄一は“依頼”を引き受ける。「横領で逃亡中」「共同生活」などのモチーフで、伝説的名作『すいか』(日本テレビ)を想起する人もいるはずだ。それもそのはず、プロデューサーが同じ河野英裕。正統な継承作といえるだろう。
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source : 週刊文春 2025年11月13日号






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