初回見た瞬間から「これはすごいぞ!」と居ても立ってもいられない気持ちになりましたよ、『ザ・ロイヤルファミリー』。

 競馬をネタにしたドラマです。一代で大企業を築き上げて馬主やってる佐藤浩市、社長の馬道楽をよく思ってない妻の黒木瞳と息子の小泉孝太郎、競馬事業撤廃のための財務調査を依頼された税理士の妻夫木聡。妻夫木の元カノで北海道の牧場の後を継いだ松本若菜……とか、もうこのキャスティングだけでごはん3杯いける。最終回は年末だから有馬記念に合わせてドラマも有馬でクライマックスと見たな。そこで成金社長の男のロマンもサラブレッドの血のロマンも男女のロマンもすべて昇華されるであろう。今どきないぐらいの「お約束がドカーンと炸裂」しそう。

「お約束」ってダメなものみたいに言われるが、「かゆいところを掻く快感」みたいなものが「お約束ドラマのお約束エンド」には確実にある。人は快感を追求する権利があり、批判されるべきは「安易なお約束」なのであって、『ザ・ロイヤルファミリー』は相当に力が入っている。佐藤浩市、黒木瞳、小泉孝太郎なんて、ベタとバカにするのは簡単だが、なかなかこのメンツをきっちり揃えてこない(これない?)のが昨今の「安易なお約束ドラマ」だ。そして税理士役の妻夫木聡。妻夫木聡だとわからなかったぐらい小物感溢れていて素晴らしい。

佐藤浩市 ©時事通信社

 大型お約束ドラマ爆誕、という以外にも楽しみどころはある。力が入っている割に、競馬を知ってる人にはツッコミどころ満載。いかにも「それっぽい競馬関係者」がいっぱい出てくるのがたまらん。安物ドラマに「あやしげなルポライター」とかが出てきて事件のウラを暴いたりもみ消したりして「そんなやついねーよ!」となったりするじゃないですか。その手のやつがいっぱい出てくる。検量室前で印象深く登場した、スネ者の無頼風を吹かした競馬記者・津田健次郎。一般客のいる通路で座り込んでパソコン叩いて記事書いてた。いねーよそんな記者。ただちにネット炎上だよ東日スポーツ。沢村一樹の大馬主もマンガみたいなカッコつけっぷり。今後もこの手がどんどん出てくると期待は止まらない。

 ただの「大型お約束ドラマ」というだけではなく、競馬ファンには別の楽しみもできるという、これはほんとに楽しみなドラマが始まった。

 で、初回の、私的いちばんの見どころは、武豊が武豊として出てきてセリフをひと言しゃべるところ。競馬ドラマというと武さんはチョイ出演するが、常に異様なまでの存在感で、一瞬なのに場をさらう。今後も出てきたら無意味に「何かある」とか思わせてしまうのでもう出てこないかも。

『ザ・ロイヤルファミリー』
TBS 日 21:00~
https://www.tbs.co.jp/RoyalFamily_tbs/

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source : 週刊文春 2025年10月30日・11月6日号