祖父母の家には「みーちゃん」という私と同じ呼び名の黒猫がいた。人懐っこい白猫の「ちーちゃん」とは違い、野良出身で人の前にはなかなか姿を現さない忍者のようなその猫は、けれど地震をきっかけにひとりで祖父母の家に預けられ、不安に泣いていた幼い私の元に毎夜現れては静かに腹の上で丸まってくれるような優しさを持っていた。『我が名はミエーヌ』を読んでいると、もう忘れてしまったはずのあの子の匂いがしてくるよう。何を考えていたかの答え合わせができる日は来ないけど、ただの熱源だと思われていた可能性もなくはないけれど、心配してくれているのだろうと勘違いさせてくれて、ありがとう。

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source : 週刊文春 2026年1月15日号