「実は、ちょっと前に、エレベーターが壊れちゃったんです」
紅茶に少し口をつけると、美奈子さんはそう切り出した。
個人宅にエレベーターなんていうのは、私の常識では大豪邸の話のような気がする。けれども、近年、三階建て以上の住宅ではさほど珍しくない設備なのだそうである。
「業者の人に来てもらったんですけど、モーターがだめになっちゃってて、部品交換だけでも数百万はかかるっていうんです。それに、耐用年数を過ぎてるから、できればまるごと取り替えちゃった方がいいらしくて。その場合は、下手したら四桁くらい必要になるかもっていう話でした」
「そうですか。かかるものですねえ」
「で――、父は、自分の部屋に行くのに困るから、交換するって言ってるんです。どうせなら全部新しいのにしたいって」
そう言って、彼女はダイニングテーブル越しに、引き戸の向こうのリビングの方を顧みた。隣では、美奈子さんの父、孝治さんが昼寝をしている。
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source : 週刊文春 2026年2月19日号






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