受験の季節である。

 中学受験、高校受験、大学受験、最近は小学校受験に至るまで、街の受験生たちが参考書をひらいて電車に乗っているところを見ると胸がキュッと疼く。親御さんの心配もいかばかりか。彼ら彼女らの姿を見ていると、自分も受験してた頃があったなあと思い出す。私の地元は高知県で、冬の京都で試験会場に向かった時、寒くて、というかはじめて感じる冷たい空気に驚いた。ちなみに電車通学ではなく、実際の自分の受験の思い出としては、高校に向かう自転車に乗りつつ英単語を聴いていた記憶が蘇るような、そうでないような……まじめな受験生だったんですね我ながら。

 そう、わたくし、受験勉強ガチ勢。国立大学を志望校に据えていたので、とにかくやるべき教科が多かった。そして大学に合格してからも、大学の周辺には塾講師や予備校のお手伝いのバイトがとにかく多かった。時給も良かったから、大学時代はよくその手のバイトをしていた。

 最近ある学生さんと話していて、「私は大学受験ガチったからさあ」と言うと、笑われた。「大学受験ガチ勢だったんだ」「そうそう」。ガチる、という言葉は便利だ。主体的に、本気で、真剣に、それに頑張ってのめり込むこと。推し活をガチる、というと他の人よりも自ら推し活を頑張っている様子がわかる。

 誰に強制されているわけでもないことが伝わるから、大学受験ガチる、とか、就活をガチる、とか、本来みんなが頑張っていることが前提の活動に対しても使いやすい。

 ガチる、というと、頑張ってるから偉いね、とは言われない。みずからその活動を頑張っていることがわかるから。

 名詞としての「ガチ」自体は昔から存在する。相撲用語で、八百長ではないこと、真剣勝負であることを「ガチンコ」と呼ぶところから、一般にも広まった。

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source : 週刊文春 2026年2月19日号