次女・直子の結婚式では、衣装着付け等のこともあって、前日から妻と親子3人で式場の近くのホテルに泊まった。

 朝、ナオが一足先に出る。ドアノブに手をかけ、

「じゃ行くね。いろいろありがとう」

 と言った。

「うん、おもしろかったよ」

 と僕は答えた。自然に出た言葉だった。

 おもしろかったよ。

 これ、人生の最期、臨終にも使えそうである。

 言えるかな。

「じゃ行くね。いろいろありがとう。おもしろかったよ」

【「A・Z」2022年6月11日の記述より】
 

 だいぶ前、2000年の正月(元旦)から日記をつけている。博文館連用日記、それが持ち運びに便利な小さめのふつうのノートになり、今は糸井重里さんの「ほぼ日5年手帳」を使用。

 それとは別に演技についてのいろいろな人の言葉、自分の思いつきを記す「ON ACTING」ノートもある。

 もう1冊、連用日記のスペースにはおさまらなかった分のための「A・Z」。

 今回のエピソード「おもしろかったよ」もこの「A・Z」にあったもの。

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source : 週刊文春 2026年2月26日号