北朝鮮の第9回朝鮮労働党大会が2月25日、幕を閉じた。大会で、全国での大規模建設、農村改革などの成果を誇った金正恩総書記(42)。党の側近らも、正恩氏の実績に「(平壌へのアパート5万戸建設などの)建設革命」「保健医療革命」などを挙げる。だが、脱北者らによると「アパートを作っても、電気も水も十分保証されていない」「病院は立派になったが、無償だった診療費が有料になった」とのこと。報道される美辞麗句と、国民生活の実態との乖離は相変わらずだ。
5年ぶりの党大会後の2月27日、正恩氏は党幹部や将軍たちに新型の狙撃銃を贈り、一緒に試射を行った。狙撃銃について髙田克樹元陸将は「オーストリア製のボルトアクション式スナイパーライフルを独自に改造したようだ」と語る。
この日、朝鮮中央通信が配信した贈呈式と試射の様子を伝える40枚の写真は、“女の戦い”が新局面に入ったことを示唆していた。
式典で狙撃銃を贈る正恩氏をそばで介添えしたのは、娘のキム・ジュエ氏だ。従来、正恩氏に署名用のペンやテープカット用のハサミを渡すのは実妹の金与正氏(38)の仕事だった。与正氏は今回、介添え役ではなく、幹部の一人として狙撃銃を贈られる側に回った。
与正氏は党大会で従来の党副部長から党部長に昇進したことが伝えられている。朝鮮中央通信は狙撃銃の贈呈を伝える報道で、与正氏の職責を「党総務部長」と紹介した。北朝鮮メディアが具体的な職責を明らかにするのは異例のことだ。
韓国メディアはおしなべて「総務部長は最高指導者に近いポストで、金与正氏の権限が強化された」と伝えた。だが、ロイヤルファミリーの資金を扱う党39号室幹部だった李正浩氏は正反対の見方をする。「総務部は党の文書を管理、維持するだけの閑職だ。党規約を守った場合、金与正は今後、対外活動に関与できなくなる」というのだ。
与正氏が副部長を務めていた宣伝扇動部は組織指導部と並ぶ党の核心部署だった。宣伝扇動部副部長から総務部長への異動は実質的な降格を意味する。李氏は「金正恩が権力闘争を心配して、金与正を牽制したのかもしれない」と語る。
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source : 週刊文春 2026年3月12日号
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