三國連太郎さんが亡くなったとき、「名優」という呼称がよく使われた。我々俳優はあまり使わないことばだが、優れた演技力の立派な俳優といったところだろう。すぐに以下の名前が僕のあたまに浮かんだ。

 芥川比呂志、三船敏郎、西村晃、もちろん三國連太郎――。

 演劇界、殊に新劇に於ける芥川比呂志の存在は大きかった。指導者として、演出家、演技者として、立派な仕事をしたと思う。僕は彼の近くに居て俳優修業をすることが出来、幸運だった。劇への関心、戯曲の読み方、登場人物へのアプローチ、そしてそれを表現へとつなげて行く際のアタマ、ユーモアの使い方(無いアタマは使えないけど)、たくさん教えてもらった。20代の僕は、正直どっちを向いて進んだらいいか、全く分らなかった。彼が、「あっちの方だと思う」と大まかな進路を示してくれたような気がする。

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source : 週刊文春 2026年3月19日号