〈父と父の作品を政治利用しないで欲しい〉
米紙『ニューヨーク・タイムズ』(7月8日)に、ある投書が掲載された。差出人はスイス在住のシアン・スノーさん。米国人ジャーナリスト、エドガー・スノー氏(故人)の娘だ。
スノー氏は毛沢東が共産ゲリラの指導者に過ぎなかった1930年代、西側諸国に毛を紹介した名著『中国の赤い星』で知られる。共産党最高指導者と個人的な交友関係を築き、中国は建国後もスノー氏を招待。西側世界への“重要なメッセンジャー役”として政治的に利用してきた。
スノー氏が亡くなってから約50年。中国では再び彼を利用しようという動きがある。理由は度重なる海外メディアの対中批判だ。
香港情勢やウイグル人の人権侵害などの報道が国内に波及するのを警戒。昨年11月出版の習近平国家主席の発言録『党の宣伝思想工作を論ず』では、海外メディアが「色眼鏡で中国を見ている」旨が載った。
そして海外の論調を変えるべく、スノー氏が使われる。今年3月の全人代の会見で王毅国務委員兼外相が「外国人記者は新時代のスノーになるべきだ」と発言。6月20日の国際シンポジウムでは、中国共産党傘下の英字紙『チャイナ・デイリー』の編集局長が、中国についての好意的な論調の記事を促すために「エドガー・スノー・ニュースルームを立ち上げる」と発表した。これを受け、シアンさんは米紙に思いを書き綴ったのである。
スノー氏も共産党に言われるがままであったわけではない。著作に対する修正要請には嫌気もさしていた。シアンさんも米紙で〈父は自分が書いたものへの変更や検閲に、たびたび抵抗していた〉と綴った。
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source : 週刊文春 2021年7月29日号