週刊文春 電子版

引退する大物議員に世襲続出 批判急先鋒だった菅首相は今…

THIS WEEK「政治」

「週刊文春」編集部
ニュース 社会 政治
官房長官、厚労相などを歴任した塩崎氏
官房長官、厚労相などを歴任した塩崎氏

 衆院議員の任期満了が迫り、自民党でベテラン議員の引退表明が相次ぐ中、余りに目立つのが「世襲」だ。例えば衆院愛媛1区の塩崎恭久氏(70)の後継は7月9日、長男・彰久氏に決まった。第1次安倍政権で官房長官を務めた恭久氏は「官邸崩壊」の戦犯と言われ、その後は鳴かず飛ばず。「政策には圧倒的に強いが、政局に疎く、上から目線で人望もなかった。そんな塩崎氏でも、息子のこととなると親バカで情に流されるのか」(政治部記者)。そもそも恭久氏も総務庁長官などを歴任した潤氏の地盤を引き継ぐ2世。3世誕生は必然だった。

 埼玉10区の山口泰明・党選挙対策委員長の後継も次男の晋氏に。山口氏は「党内随一の人たらし。まさに情を大事にする政治家だった」(同前)。泰明氏はかつて菅義偉首相に秘書として晋氏を預けて下働きをさせ、世襲の準備をしてきた。

 この2人は世襲が事実上決まっていたとはいえ、形式上は党県連が公募の形を取った。ところが三重2区の川崎二郎・元厚労相は10日に記者会見で引退表明したかと思えば、県連は即日、公募もせずに長男の擁立を発表。「有権者を馬鹿にしている」(地元記者)と声が上がるのも当然だ。さらに酷いのは前回衆院選(栃木2区)で落選、政界引退した西川公也元農水相だ。公募で地元県議が後継に内定したが、それを覆して息子をねじ込もうと党本部への陳情を続けている。

 自民党が政権から転落する2009年、党内には世襲批判の声があった。急先鋒は菅氏。選挙対策副委員長として世襲制限を導入しようと数多の取材に応じ、「自民党を弱体化させているのは世襲。廃止する」「世襲を認めれば特定の人や団体を大事にする党だと思われる」と訴えた。周囲に吐露する本音はさらに激しく、小泉純一郎元首相を「世襲のくせに改革者を気取るなよ」と批判し、「敵を作るが、絶対やる」と鼻息は荒かった。しかし、いま菅氏が相次ぐ世襲をトップとして止める様子は微塵もない。そればかりか河野太郎行革相や小泉進次郎環境相、梶山弘志経産相ら可愛がる面々は世襲ばかり。「首相は自らの世襲はないだろうが、息子に甘いことは総務省接待問題で明らかになった。世襲と接待問題には、『身びいき』という共通点がある」(政治部デスク)。

 身びいきは安倍政権下で森友学園、加計学園、桜を見る会をめぐり散々問題になってきた。「菅氏がかつて語っていた通り、世襲は自らが好む特定の人や団体を大事にすることにつながる」(同前)。世襲が続く限り、第2、第3の「もり・かけ・桜」がいずれ起きてしまうのではないか。

source : 週刊文春 2021年7月29日号

文春リークス
閉じる