毎年どこかでやってるような気がする「宝塚音楽学校受験ドキュメント」。

 昔はよく「名門中学受験ドキュメント」なんてのがあって、受験日に校門前で受験スクール生が円陣組んで「エイエイオー!」とかやってたがさすがに今どきはあまり見ない。そんな番組に密着されてる受験生、学校のほうでお断りだろう。

 でも、お手軽な娯楽として受験密着番組を見たい人はいっぱいいる。そんな視聴者のニーズを満たすのは今、宝塚音楽学校受験ドキュメントしかない。それに宝塚歌劇団(以下ヅカ)というものが「ハデでキラキラしてるが同時によくわからないへんな文化に縛られた世界」と見られているので、試験に合格して号泣、不合格で号泣、どっちも半笑いで見物できる、すごくテレビっぽい娯楽番組になるのだ。

宝塚大劇場 ©︎文藝春秋

 私はヅカは見ないけれどヅカと文化的に似通っているOSK日本歌劇団(今回の放送でも、ヅカに落ちた子がOSKに入団してがんばってる、という描写が一瞬だけ出た)のファンをやって入り待ちも出待ちもしてお茶会にも出る、なんていう歌劇文化に浸かっていたから、あの「歌劇学校を受験する子たち」のことは痛いほどわかる。なので「パッと見可愛い子が案外ダメだったりするんよな」「こういう薄い顔のほうが舞台化粧が映えるはず」などと見入ってしまいつつ、OSKという同業他社のファンとしては「良さそうな子よ、落ちてOSKに来てくれ」「鶏口となるも牛後となるなかれという言葉を知ってるだろう!」などと口走ったりしている。

 しかし、こういう歌劇学校受験ドキュメントでは当然のように出てくる、有名受験予備校はなんだかな。今回も出てきた。元男役のヅカOGがやってる予備校で、近年たくさんの生徒を宝塚音楽学校に送り込んでいるという。その「愛のある厳しい指導ぶり」がたっぷり描かれるんですが、この予備校の有様を見てるとゲンナリしてくるのである。半世紀前ぐらいに「受験戦争は子供をおかしくする」なんて言われて、そんなテーマのドラマとかあったりしたもんだが、今も大して変わらなくて、受験に勝つとは結局、傾向と対策にガチガチに締めつけられることなのね……と哀しい気分になってしまうのだった。

 歌も踊りもまるでやったことがない少女が山から下りてきて(何者だ)、いきなり試験会場に現れ、その圧倒的な魅力で合格を勝ち取ってしまう、なんてマンガみたいなことがあればいいのに、と思うけどそれはテレビの人も考えるに決まってるが、そんな子がいないからいつも営々と受験予備校のことばっかやることになるわけです。受験生の皆さん、明日のスターを目指してがんばってください。

『沸騰ワード10』
日本テレビ 金 19:56~
https://www.ntv.co.jp/futto/

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source : 週刊文春 2026年4月30日号