セイレーンは、船が通ると近付き“水夫さん、わたしが好きならこちらに来て抱きなさい”といっては媚態を示す。若い水夫は堪らず海に飛び込んで、その結果、セイレーンの餌食にされてしまうのだ――。
僕はしばし、中城モール裏手の海上でウッフ〜ン♥ポーズを決め横たわる白い人魚像に思いを馳せた。そんなに遠くはない。きっと引き潮になれば君はビーチの上。人体、いや人魚体デッサンの狂いは少しあるけどその艶かしい肢体を間近に拝めるはずだ。でも僕にはそんな悠長な時間はない。
“そんなこと言わずに今すぐ海に飛び込んでわたしを抱きなさいよ”
おいおい、冗談はやめてくれよ。こちとら若い水夫じゃないんだから。ところで聞くが、もう一体の人魚像はどこにいる?
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source : 週刊文春 2026年5月28日号



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