第17回 「週刊文春」やらかした!?

2021年7月16日配信分

「週刊文春」編集長

「申し訳ありません」

 締切の日の夜、暗い顔をしたO君が近づいてきました。取材先で車の事故を起こしたというのです。熱海の土石流取材に行き、車をホテルの駐車場に入れようとした際、ハンドルを切りすぎて、後部ライトを駐車場の壁にぶつけ、破損させてしまったとのこと。

 2年目のO君は、7月1日に「週刊文春」に異動してきたばかり。週刊文春志望で、希望部署で働けると思った瞬間に、いきなりやらかしてしまった。へこむのは無理ありません。

 その時、私が言ったのは、もちろん反省すべきは反省して同じことが起こらないようにするのは当然。ただ、これで「自分に×がついた」「もう失敗できない」などと思う必要はない。一番ダメなのは、これ以上マイナス評価を受けたくないと「失敗を隠す」「ウソをついてしまう」ことだ。

 私は、部員に「週刊文春は日本で一番失敗できる雑誌」だと言っています。小誌の仕事は「これは無理でしょう。でもできたら面白いよね」ということが少なくありません。一つのスクープが生まれるまでには、幾多の失敗があります。失敗ごとに、いちいちマイナス評価をつけていたら、部員はゼロになってしまいます。

 何より、小誌は1年に50冊出ます。失敗を引きずる間もなく、次の号がやってくるのです。私も編集長として、毎週のように「失敗」を繰り返しています。「あの件をなんでもっと大きくやらなかったんだ」「あのタイトルがわかりづらかった」。何より売れ行き・・。でも、週刊誌のいいところはすぐに次の号がやってくるのです。空振り三振しても、次の打席でヒットを打てば取り返せる。それが、週刊誌です。

 失敗と言えば、私もいきなり、やらかしました。あれは、22年前。「営業部」から「新雑誌編集部」に配属された私は、待望の編集者となり、やる気に満ちていました。創刊準備号のテーマは、「新宿歌舞伎町」特集。一番下っ端だった私は、先輩たちに言われて、歌舞伎町を知るために住むことになりました。“パワハラ”という言葉がなかった時代の話です。アパートは家賃3万4千円、風呂なし、トイレ共同。そこから、夜になると歌舞伎町に出撃して中国、韓国、タイの料理店を探し歩きました。歌舞伎町で働く人たちが、自分たちの国の店で「美味しい」と言っている、日本のガイドブックに載っていないディープな店を探すのです。

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source : 週刊文春

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