世の中、うまく行かないことばかりだ。先日もシャツのボタンが取れていることに気づいた。他には不都合なところはない。だが、ボタンがない。予備のボタンがついているシャツもあるが、そういうシャツのボタンは取れることはない。
やむなく、シャツの袖口のボタンを1個外し、それを使うことにする。そこからが大変だった。針に糸を通すのが不可能に思えるほど難しい。針の穴が小さすぎる。象に指輪をくぐらせるようだ。これは不可能だと思いながら、デタラメに糸を穴と思われるところにぶつけ続けていると、偶然、通った! 奇跡が起きた! そんなことがあるとは思わなかった。喜びと驚きで動転し、せっかく通った糸を引き抜いてしまった。まさに「九仞の功を一簣に虧く」ようなことをしてしまった。こんな中でも悪いことばかりではない。「九仞の功を一簣に虧く」という表現を使う機会が得られた。
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source : 週刊文春 2026年6月11日号






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