遥か以前、連載を持つなど思いもしなかった頃、自分用に書いて笑っていた原稿が1冊分になったので、自信のある部分を家族、知人、学生らに読んでもらった。反応は意外だった。はかばかしくなかったのだ。

 面白いという反応を示す者は一人もおらず、ニコッともしなかった。原稿を読んで返すときの表情は、「気の毒に」という同情だった。

 一番身近な連中ならわたしを元気づけることばをかけてもよさそうなのに、その余裕も失った反応だった。これほど身近な連中との距離が遠くに感じられたことはなかった。わたしには可笑しくてたまらないものが当惑、困惑、同情しか呼び起こさないのだ。それまで仲間だと思っていた連中が、敵だと分かったようだった。ちょうどいつものように朝の熱いお茶を飲んだら氷水だったような気分だ。

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source : 週刊文春 2026年6月18日号