ものすごくくだらないことをもったいぶった口調で書いた論文が可笑しいことを発見し、初期のエッセイはそのやり方で書いていた。

 教え子が言った。

「ですが例外があります。『助手との会話』です」

「ああ、あれね、あれは私が実際に助手とふざけた会話をしたことを、ほぼ忠実に文章にしたものだ。あの頃、わたしは論文以外のものを書く能力が欠けていた。とくに会話には、内容的なやり取り、人間同士のぶつかり合い、ドラマがある。現実の人間関係もままならないのに、文章力のないわたしに書けるわけがない」

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source : 週刊文春 2026年6月25日号