義憤と、私刑が流行していると思う。

 私刑の極みといえば4年前の安倍晋三殺害事件だが、私はこれは義憤ではなくて完全に個人的な恨みだと思っている。被告の彼は別に世のためにやったわけじゃないだろう。

 しかし、旭川地裁に乱入した男はきっと本人の中で「義憤」だ。大いに話題になった旭川の女子高生殺人事件について、懲役27年という判決に納得できず、全くの無関係なのに法廷に乱入し「死刑やろうが」などと叫んで逮捕された男。

 もちろん私だって身近な人が殺されたなら犯人を殺してやりたいと思うけど、そんな「私刑」願望と裁判とは別だ。そもそも1人を殺して懲役27年というのは、統計上他の事件に比べてかなり重い。私はこの事件については、犯人も女性であるセンセーショナルな事件としてマスコミで何度も報じられた結果、国民感情を酌んでむしろ刑が重くなったようにすら感じる。もし犯人も被害者も男性だったら、こんなに報道され、こんな刑になったかどうか疑問だ。でも、「義憤」で行動する人はそんな背景はすっ飛ばしている。

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source : 週刊文春 2026年7月9日号